カレントテラピー 35-12 サンプル

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カレントテラピー 35-12 サンプル

Current Therapy 2017 Vol.35 No.12 89治療薬解説1195対象症例を,1カ月以上3年以内に非心原性脳梗塞の既往があり,年齢が45歳以上80歳以下で,血清総コレステロール値が180~240mg/dLの脂質異常症患者とし,1,578例を登録しプラバスタチン(10mg/日)投与群またはスタチン非投与群の2群にランダムに割付した後,平均4.9年の追跡調査を行った11).主要エンドポイントは脳卒中+一過性脳虚血発作の再発であり,副次エンドポイントとして脳卒中の病型別再発や脳卒中以外の血管イベントを評価した.J -STARSでは,プラバスタチンによりLDLコレステロールが129.5 mg/dLから108.7 mg/dLまで低下した.主要エンドポイントである脳卒中+一過性脳虚血発作の再発は,プラバスタチン(10mg/日)内服により明らかな低下は認めなかった(hazard ratio 0.97,95%CI0.73- 1.29).しかしながら,副次エンドポイントである脳卒中の病型別再発において,アテローム血栓性脳梗塞の発症がプラバスタチン内服により67%の低下を認めた(hazard ratio 0.33,95%CI 0.15- 0.74,図4).脳出血を含めたその他の脳卒中病型はプラバスタチン内服により明らかな差を認めなかった.SPARCL試験において,アトルバスタチン群で脳出血発症率の増加が報告された9).その脳出血発症に関するサブ解析では,脳出血の既往,男性,アトルバスタチン治療,加齢が独立した脳出血リスクになっていることが示された.これらを調整した後では,最終来院時の血圧高値は脳出血発症のリスクになっていた.また,アトルバスタチン内服群では最終来院時のLDLコレステロール低値は脳出血発症リスクとしては有意ではなかった12).かつて,日本においては低栄養状態や肝硬変に伴う低コレステロール血症例には脳出血が多いとされていた.Multiple Risk Factor Intervention Trial(MRFIT)の結果では,総コレステロールが160mg/dL未満では脳出血の発症危険度が高くなることが示されている13).さらに,Eastern Stroke and CoronaryHeart Disease Collaborative Research Groupによる日本と中国から登録された60,750例の解析結果では,総コレステロールが23.2mg/dL(0.6mmol/L)低値であれば,出血性脳卒中は27%(odds ratio 1.27,95%CI0.84- 1.91)のリスク上昇を認めた14).これらの結果を踏まえて,極端にコレステロール値を下げることは冠動脈硬化には有用であっても,出血源となり得る脳血管穿通枝の微小動脈瘤を脆弱化させる可能性が危惧されている.SPARCL試験を含めたスタチンによる脳出血発症に及ぼす影響を検討したCTT Collaborationによるメタ解析の結果では,スタチンにより脳出血が増えるという結果は示されていない〔LDLコレステロール38.6 mg/dL(1 mmol/L)低下によるrelativerisk 1.10,95%CI 0.86-1. 42〕(図2)4).したがって,現状では治療的にLDLコレステロールを低下させることが原因となり,脳出血のリスクを増大させるといまたは信頼区分99%95%77.2mg/dL(2mmol/L)未満77.2(2)から96.5(2.5)mg/dL96.5(2.5)から115.8(3.0)mg/dL115.8(3.0)から135.1(3.5)mg/dL135.1mg/dL(3.5mmol/L)以上総計910(4.1%)1,528(3.6%)1,866(3.3%)2,007(3.2%)4,508(3.0%)10,973(3.2%)1,012(4.6%)1,729(4.2%)2,225(4.0%)2,454(4.0%)5,736(3.9%)13,350(4.0%)1 1.30.78(0.61-0.99)0.77(0.67-0.89)0.77(0.70-0.85)0.76(0.70-0.82)0.80(0.76-0.83)0.78(0.76-0.80)χ21=1.08(p=0.3)コントロール/少量イベント(%/年)スタチン/多量スタチン/多量コントロール/少量LDL-C 38.6mg/dL(1mmol/L)低減による相対危険度(信頼区分) トレンド試験0.45 0.75図3 スタチンによる主要血管イベント(冠動脈疾患,冠動脈血行再建,脳卒中)に及ぼす影響スタチンの効果に対する登録時LDL コレステロール値の影響の検討.〔CTT Collaboration,参考文献4)より引用〕