カレントテラピー 35-12 サンプル

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92 Current Therapy 2017 Vol.35 No.121198包括的脳卒中センターとJ-ASPECT Study九州大学大学院医学研究院脳神経外科 黒木 愛九州大学大学院医学研究院脳神経外科教授 飯原弘二米国では,rt-PA静注療法の普及整備を目的として,一次脳卒中センター(Primary StrokeCenter:PSC)の要件が2000年に設けられ,すでに1 , 000を超える施設が認定され,急性期病院全体の約25%とされる.さらに,より高度な脳卒中医療を常時提供する施設の必要性が高まり,2005年に包括的脳卒中センター(Comprehensive Stroke Center:CSC)の要件が設けられ,約100施設が認証を受けている.CSCではPSCの要項に加えて,さらなる専門医師の充実,可能な検査や治療の広がり,neurointensive care病床で複雑な病態の脳卒中患者に常時対応可能などが特徴である.日本では米国のような明確なPSCやCSCの要件基準が設けられていないものの,脳卒中医療の地域格差の均てん化やt -PA静注療法の施行率向上のために,CSCの適正な整備を行う必要性が求められている.そのために,本邦の脳卒中診療施設の現状を明確に評価する必要があり,このような見地から,われわれはJ-ASPECT Study Groupとして2010年度から厚生労働科学研究費を得て,「包括的脳卒中センターの整備に向けた脳卒中の救急医療に関する研究(飯原班)」を開始した.まず,2011年に「包括的脳卒中センター」の推奨要件の充足度を把握するための調査を行った.米国のCSC推奨要件に関する施設調査を施行し,参加協力いただいた749病院から回答を得た.この推奨要件は,5つの大分類(人的資源,診断機器,専門的治療,インフラ,教育研究)とそれを構成する25項目からなり,1項目1点の加点法で25点満点とし,合計したものをtotal CSC scoreとした.さらに診断群分類包括評価(diagnosis procedure combination:DPC)情報と連結させることで,CSC scoreと患者のアウトカムの関連も解析した.この結果から,脳神経血管内治療学会専門医や神経学会専門医の充足率が低いことや,stroke unitの整備が遅れているなど,本邦における脳卒中医療体制の課題が明らかとなった.また,CSC scoreはすべての病型において,入院時死亡率の減少と有意に関係していることが明らかとなった.この施設調査の第2回目を2015年に行っており,その結果を前回のものと比較解析することで,新たな課題や現状が明らかになると思われる.今後は,PSCとCSCを人口数や地理的要因を考慮したうえで,適切に配置することが必要不可欠であり,そのためには中核となるCSCと一般急性期を担う複数のPSCとの連携および救急隊との連携が重要であり,各地域の地理や医療体制の特徴を活かして,各々の機関が団結したうえで十分な議論が必要である.さらに,救急隊との連携に関しては,2016年度から「脳卒中を含む急性期循環器疾患の救急医療の適確化をめざした評価指標の確立に関する研究(飯原班)」として,病院搬送前スケールの整備やそれに応じた搬送先の選定基準の作成,またそのアウトカムとの関連の検討などを行っている.脳卒中診療の最近の動向─ 新しいエビデンスとトピックス