カレントテラピー 35-12 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.12 93Key words1199塞栓源不明の脳塞栓症(ESUS)の概念と病態東京女子医科大学神経内科学教授 北川一夫脳梗塞の分類はTOAST分類が現在でも広く使用されている.心房細動など明らかな心塞栓源が存在する心原性脳塞栓症(cardiogenicembolism),脳へ灌流する主幹動脈のアテローム硬化による狭窄性病変が原因となるアテローム血栓性脳梗塞(atherothrombotic braininfarction:ATBI,または大血管アテローム硬化 large artery atherosclerosis),脳細動脈の血栓性閉塞に伴うラクナ梗塞〔または小血管病(small vessel disease)〕が主要3病型で脳梗塞全体の70~80%程度を占めている.特定の原因による脳梗塞として頻度の多いものは,動脈解離,血管炎,抗リン脂質抗体症候群,もやもや病,片頭痛,薬剤・ホルモン剤使用などが挙げられる.しかし,これらの原因疾患の明らかでない脳梗塞が全体の20%程度を占めるとされ,cryptogenic stroke(潜因性脳梗塞)と呼ばれてきた.ただし,cryptogenic strokeの大部分は塞栓症であり,そのため塞栓源不明の脳梗塞(embolic stroke of undeterminedsource:ESUS)と呼ぶことが2014年Hartらにより提唱され,次第に定着しつつある.その診断基準は①ラクナ梗塞ではない梗塞病変をCT/MRIで認める,②病変へ灌流する頭蓋外,頭蓋内主幹脳動脈に50%以上の狭窄がない,③心房細動,心房粗動,人工弁,心臓内血栓,左房粘液腫,僧房弁狭窄,最近の心筋梗塞,重度心不全,感染性心内膜炎,弁疣贅などの主要な心塞栓源がない,④動脈炎,解離,片頭痛・血管攣縮,薬剤など他の特定の原因がない,の4項目からなる.想定されている塞栓源は,塞栓源としての関与が明らかでない心疾患(大動脈弁狭窄,僧房弁逸脱症など)の存在,潜在的に存在する発作性心房細動,悪性腫瘍に伴う塞栓症(非細菌性血栓性心内膜炎など),動脈原性塞栓症(大動脈プラーク,頸動脈プラーク潰瘍など),奇異性脳塞栓症(卵円孔開存など)が想定されている.ESUSの診断には12誘導心電図以外に24時間ホルター心電図,経胸壁心エコー検査,頸動脈超音波検査(または頸部MRA検査)で主要3病型の存在を除外しておく必要がある.ESUSは現在のガイドラインでは,抗血小板薬の投与が推奨されているが,国際共同試験としてESUSに対する直接経口抗凝固薬(DOAC)とアスピリンの有効性を比較する国際共同試験が進行中であり,その結果の発表が期待される.