カレントテラピー 35-12 サンプル

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8 Current Therapy 2017 Vol.35 No.121114Ⅰ 一過性脳虚血発作(TIA)の概念と発症機序TIAは,かつて24時間以内に症状が消失する虚血発作を指していたが,その後,MRIの普及に伴い拡散強調画像にて新規の梗塞巣を認めないものがTIAで,虚血時間は問わない,という考え方が米国を中心に支持されている1).臨床症状は典型的には1時間以内に消失するものが多く,それより長時間の場合はMRI上,脳梗塞を呈してくる.一方,日本においては厚生労働省班研究(研究代表者:峰松一夫.『TIA診療マニュアル2012』)にて再びTIAの定義に24時間の枠が採用されており,臨床症状に基づいた診断が推奨されている.定義はともかく,TIAは脳梗塞と同様に急性脳血管症候群(acute cerebrovascular syndrome:ACVS)に含まれ,緊急に入院,精査を行い,直ちに病態に応じた進行抑制,再発予防を開始する必要があるという認識が重要である.TIAの病態は「一過性の脳血流障害とその後の再灌流により一過性の神経欠落症状を呈するもの」と考えられる.脳梗塞の病型のなかでは,アテローム血栓性脳梗塞での発症が多く,次いで心原性塞栓症となり,ラクナ梗塞ではまれである.アテローム血栓症によるTIAの発症機序は4つに分けられ,①プラークの破たんにより血小板血栓ができその場で血管を閉塞した(on-site occlusion)が,再開通した場合(図1A),②プラーク上で形成された血小板血栓が遊離して末梢動脈を閉塞する動脈原性塞栓症(A-to-A embolism)の場合の血流再開(図1B),③高度な狭窄に全身の血圧低下が加わることで虚血を生じる血行力学不全症(hemodynamic insufficiency)* 大阪市立大学大学院医学研究科神経内科教授脳卒中診療の最近の動向─ 新しいエビデンスとトピックスTIAと軽症脳梗塞の評価と早期治療伊藤義彰*かつて一過性脳虚血発作(TIA)は虚血症状の持続時間が24 時間以内のものとして脳梗塞とは区切られていた.現在では,TIA と軽症脳梗塞は虚血時間の長さや虚血の程度に違いがあるものの連続している病態としてとらえる必要があることが認識されており,どちらに対しても緊急で検査し進展・再発予防の治療を始める必要がある.虚血性脳卒中の超急性期には血栓溶解療法,血管内治療を考慮し,その後は病態に応じた再発予防を早急に開始する.非心原性脳梗塞では,抗血小板薬の併用療法にて強力に血小板血栓形成を抑制する.心原性塞栓症のうち非弁膜症性心房細動を原因とするものには,直接作用型経口抗凝固薬の早期投与の有用性が明らかとなりつつある.かつてはラクナ梗塞と考えられていた病態のなかに,分枝アテローム病のような進行性の疾患が含まれたり,境界領域梗塞の病態にも動脈原性塞栓症の病態が含まれたりと,病態への理解が進んでいる.