カレントテラピー 35-12 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.12 11虚血性脳卒中の診断と治療1117来院時の臨床症状としても,自覚症状が消失しても神経学的に異常を認める場合があり,専門的な診察が必要である.神経学的に虚血症状が消失していても,不整脈,血圧の左右差,頚動脈雑音,心雑音など基礎疾患を評価する必要がある.緊急で行う検査としては,血栓溶解療法や血管内血栓回収療法が適応となる場合は,一刻を争って検査を進める必要がある.最近は画像検査としてはMRIよりもまずCTを行い,出血性病変が除外できれば血栓溶解療法を開始する施設も少なくない.その後,MRI拡散強調画像にて虚血病巣の描出,MRAにて閉塞血管の確認を行う.血管内治療となると,血管撮影が必要となる.また虚血の範囲と虚血壊死巣を比較するため,灌流画像(perfusion image)を撮る.不整脈の検出としては入院時に心電図にて持続性の不整脈を評価し,その後救急外来から入院病床では心電図をモニターし,心原性塞栓症/TIAの可能性を考慮する.心原性塞栓症が強く疑われる場合や,心電図,胸部X線撮影にて心疾患が疑われる場合は,入院後速やかに心エコーを実施する.最近は退院後の長期間の心電図モニターとして小型埋め込み型心電図や胸部ベルト型心電図などもあり,心房細動の検出率が格段に向上することが報告され実用化されている.またプラークから末梢に向かって剥離する微小塞栓子は,経頭蓋ドプラー法(TCD)で検出できる.アテローム血栓症急性期にはMESを測定すると,発症日から7日目にかけてMES出現率は低下するが,特に抗血小板薬を併用するとこの低下は促進できることが複数の論文で報告されている.(CARESS試験5),CLAIR試験6))Ⅲ TIAの鑑別診断TIAとして専門機関に紹介される症例の約20%は片頭痛の前兆(migraine aura)である,という報告があり7),TIA様の発作をきたす鑑別疾患(TIA mimics)として最も頻度が高い.症状の後に頭痛がほとんどない場合もあり,「頭痛のない片頭痛(acephalgicmigraine)」と呼ばれる8).片頭痛の予兆はcorticalspreading depressionによって起こると考えられており,脱分極した部位が次第に移動し,20~30分ほどでおさまる.閃輝性暗点やジグザグ模様などの視野障害が最も多い.その他の前兆としては,感覚,運動,構語障害がある.こうした複数のモダリティが障害される場合は,同時ではなく順番に起きる点がけいれん発作とは異なる.次にTIAとの鑑別が問題となるのは,けいれん発作(seizure)である.全般性発作とTIAとの鑑別は,発作の目撃者がいれば容易である.部分発作の二次性全般化では,てんかん後の朦朧状態,頭痛,不随意運動,失禁などがあれば,けいれん発作と診断できる.片麻痺などの機能脱落症状は,てんかんの単一の症状としては極めてまれである一方で,Todd麻痺は数時間以上続くことがあり,けいれん発作を目撃していないとTIAとの鑑別は難しい.部分発作は同一の発作を繰り返すのに対して,TIAは繰り返すごとに症状が違うことがしばしばある.さらに失神もTIAとして紹介されることが多い.失神前に,気が遠くなる感じ,眼前暗黒感,聴覚低下,などがあれば失神の診断は容易である.起立性低血圧,頚動脈洞刺激によるものが多いが,最も重要なのは不整脈による失神である.椎骨脳底動脈系のTIAでは脳底動脈先端症候群での視床障害以外に一過性の意識障害が主症状となることは極めてまれである.末梢性のめまいもTIAとの鑑別を要する場合がある.回転性,頭位変換性,発作性などの特徴や,聴力低下を伴う場合,眼振を認める場合は末梢性めまいが示唆される.一方,浮動性めまいの場合は,中枢性のこともありMRI,MRAにて病巣の評価が必要となる.また一過性全健忘がTIAの症状として見られることもあり,鑑別が必要である.その他にTIAと鑑別を要する一過性の神経症状をきたすものとして,アミロイド血管症に付随するアミロイド発作amyloid spellや円蓋部くも膜下出血でも一過性の神経症状を呈する.また髄膜腫などの脳腫瘍を含めた器質的疾患でも血管の圧迫などによると考えられる一過性の症状をきたす.脱髄疾患における強直性痙攣tonic spasmや発作性構音障害paroxysmal