カレントテラピー 35-5 サンプル

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68 Current Therapy 2017 Vol.35 No.5472Ⅰ はじめに筆者は漢方と現代医学は「相互補完的」に機能し得るものと考えている.筆者とて現代医学の教育を受けたわけで,実際の臨床場面では当然ながら,向精神薬(抗鬱薬・気分安定薬の類)をも多用している.しかし,筆者の臨床スタンスは「漢方的な考えをベースに現代医学も取り入れる」なのである.前段を読者に強いることは不可能である.本稿に目を通してくださる方の意識は「なんとか漢方薬を臨床にうまく取り入れたい,そのノウハウ」を求めてであろう.中医学を学び漢方専門家を自称している筆者としては「中医学をきちんと学び……」とアドバイス申し上げるのが本道と思えるのだが,多忙な読者にそれを提言したところで実行してもらえる可能性は低いと思える.具体的には「中医学入門」という類の本を学ぶことであろうが,とりつきにくい書物ではある.(拙著1),2)は「中医学入門書」へのイントロダクション的な意味はあろうかと考える.ご参考までに)もう少し読者諸賢に実行可能な方法論を語ろう.まずは,中医学入門(例えば参考文献3)),中医方剤学(例えば参考文献4)),中薬学(例えば参考文献5))の三点セットを座右に置いてもらいたい.本来ならば「中医学入門」を通読し,その文脈で目前の患者を考察し,薬学を学び,さらに薬物の複合体としての方剤学の本を参照しながら処方するのが本道なのであろうが,それは中国で大学教育(つまり数年間かかること)を経て付与される国家資格になっている中医師の学習法であり,われわれ日本の臨床家には不可能に近い方法と感じる.すでに臨床に携わっている読者には「こういう時はナントカ湯」という,先人の伝える漢方方剤運用のコツ(口訣)といった類の情報をご存じの向きも多いだろう.折角だから,それをスタートラインとすること* 下田医院院長うつ疾患の診断と鑑別─双極性障害を中心に感情障碍臨床における漢方下田哲也*感情障碍に対する漢方療法の解説を求められ本稿を執筆した.筆者は漢方的な発想が感情障碍を含む精神科領域の臨床にきわめて有効なものだと考えている.患者の発信する多様な訴えに,現代医学では対応しきれない部分があることは,読者の多くにも共感されよう.例えば中国において伝統医学を行う資格,中医師は5 年間の大学教育を受けた後与えられるものである.本誌読者にそれに近い学習を強いるわけにもいくまい.よって,本稿では読者の漢方応用力を高めるため2 つの提言をした.すなわち,臨床応用する漢方方剤の欠点も含めた詳しい学習と,患者の呈する精神症状のみならず,随伴する身体的症状にも丁寧に対応することである.また,さらにその具体例として「神田橋処方」のエキス製剤による加減運用に関する提言をした.