カレントテラピー 35-5 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.5 69473が読者にとって最も実際的な方法と考える.先述した「三点セット」を通読する必要はない(もちろん,通読するなという意味ではない).まず先輩や指導医から耳学問した口訣で与えられる情報のキモは「漢方方剤名」であろう.そして,ご自身で患者に「ナントカ湯」を処方したならば,少なくとも「方剤学」で,その方剤の項目を読んでほしい.すると,その方剤の構成生薬の解説や,どういった病態に応用可能かということがらが,こなれていない中国語直訳的四文字成句満載の記載に出くわすはずである.それから,その構成生薬の意味を薬学書にあたり,こなれてない成句の意味を入門書で読んでみる,という学習法をお勧めする.(ちなみに,なぜ「中医学」で「日本漢方」ではないのかと感じられる読者もあろうが,良くも悪しくも中医学は「言葉」をもっていると感じるが故である.)老婆心を付け加えると,先述した「三点セット」のなかで,現代的な教育を受けてきた読者に最も受け入れがたい記載が多いのが「中医学入門」の類であろうと思える.したがってお勧めの購入順位は,方剤学,次に薬学,最後に入門だろう.Ⅱ 漢方薬を臨床に取り入れるためにそれはともかく,本稿では読者の漢方的臨床力を即効的に高めうる2つの提言をしたい.結論からいえば,1. 各々の漢方方剤が適応する典型的な症状や,その方剤の特性を,起こりやすい副作用も含めて詳しく学ぶこと.2. 主症状もさることながら,随伴症状に注目すること.この二項目である.漢方治療の基本は「随証治療=証により治療を考える」ことであるが,あまり漢方に詳しくなくても「術後イレウスに大建中湯」とか「こむら返りに芍薬甘草湯」といった使い方はご存じであろう.これらはきわめて奏効率の高い使用法である.この二方が現在エキス剤売り上げのナンバー1, 2であることはむべなるかなである1).証なる概念は西洋医学でいうと「症候群」に近いと思えるが,症候群概念に希薄だが証概念の特質といえることに「治療法を含んでいる」ことが挙げられよう.例えば前段で述べたことで言えば「こむら返りは芍薬甘草湯の証」といってよいと思える.精神科領域で「漢方的に典型的な症状」の代表格として「梅核気=咽頭異常感症」が挙げられよう.「梅核気には半夏厚朴湯」という口訣を知っている読者も多かろう.前段,確かに有効率が高く,よいフレーズだと思えるが,それだけで済ましてほしくはないところである.半夏厚朴湯は中国流漢方(中医学)的に言えば「気滞痰鬱」,日本漢方的に言えば「水毒」の存在があるときに有効な方剤で,乾燥症状を助長する危険をもっていることにも注意されたい(処方されるときは,少なくとも患者の舌をみてほしい.ネチョっとした厚めの舌苔があるときはお勧め.逆に舌苔がほとんどないような人には注意が必要である).梅核気=咽頭異常感症はあるが,口渇があり舌苔がない,さらに舌質にひび割れたようなギザギザ(漢方業界では“裂紋”と称する)これらの所見を,中医学では陰虚(潤いの不足)と称するのであるが,このような症例には半夏厚朴湯は適応しにくいと思える.(上級編として,半夏厚朴湯に例えば六味丸のような滋陰薬(潤いを与える方剤)を併せて用いるという方法はあるが……).「典型的な症状を詳しく学ぶ」ということは,前段で述べたようなことで,副反応にも敏感であろうとすることである.従来の漢方解説書に対する不満は,副作用的なことの記載が乏しいところである.読者も例えば選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors:SSRI)を処方するとき「セロトニンは胃腸系にも働く神経伝達物質ですから,吐き気などの副作用をおこす可能性があります.軽い場合は継続すると大丈夫なこともありますが,つらいときは相談してください」といった説明を後輩に指導したり,指導されたりした経験があるだろう.それに類したことが,漢方薬の処方においても大切だと思うものである.少なくとも,精神療法的効果は期待できよう.なお,「漢方に副作用はなく,誤治あるのみ」といっ