カレントテラピー 35-5 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.5 71代替療法475う.表1 7)に,本特集のテーマとかなりオーバーラップする頁をそのまま引用した.(本表にあがる多くの類型は鬱状態とオーバーラップし,陰虚肝旺や心火亢盛といったものは躁状態に相当するだろう)左の方の「腎陰不足」とか「心血不足」とかいうところが,中医学流の「証」である.「証概念は,治療法を含んでいる」と先述しておきながら,との苦情があるかもしれないが,不足したり虚したりしている場合は「補えば」良いわけだし,「旺だったり盛」のときはそれを抑えたり寫したりすることを考えるわけだからお許し頂きたい.本表を引用した意味は,これをつぶさに解説しようということではなく(もちろん,中国語に堪能な読者が,これを臨床の参考ししたいというのをあえて止めることはしない)なんとなく,雰囲気を感じ取ってもらいたいが故である.注目してもらいたいのは,例えば表1のなかほどに,口が渇くか否かとか,右の方に大便の状態がどうかという項があることである.つまり例えば,便秘があり舌質が紅くて,口が渇き,熱感があるとすれば,それは潤いの不足(陰虚)や熱性の邪気の存在(例えば心火亢盛など)と表現されているわけである.口渇や便秘といった,精神医学専門の立場からみれば「本筋ならざる“随伴症状”」に丁寧に対応することが,漢方~中医学的に言えば案外本質的な治療(換言すれば,その患者が呈している不調感の基盤をなす不均衡を是正すること)につながる可能性を指摘したいわけである.(ちなみに,私見では「日本最古のメンタル漢方本」といえる江戸時代の『癲癇狂経験編』8)では,多くの患者に「下気円(含,大黄,香附子)」なる薬物が投与されている.なお,香附子とは代表的な理気薬(気の巡りを整える生薬,気の鬱滞を改善する効能ともいえよう)であり,エキス剤では香蘇散などに配合されている.大黄に関して言えば,以前とある老中医の言として「興奮性の精神異常には必ず用いる」といった意味の文章を読んだ記憶がある(詳細な出典不詳,乞うご寛容).下剤としての効能は周知のことと思えるが,中医学的に言えば「清熱寫火」の効能もあるわけで,表1の分類で言えば陰虚肝旺や心火亢盛といった病態には是非使いたいものである(そういった証分類のところの,「便」のところをみると「秘」となっている.そんなことが筆者をして「随伴症状を重視することが,存外に本質的」と考えさせる所以である).さて,「随伴症状を丁寧に」というお題目だけでは申し訳ないので,拙著1)ですでに述べたテーマであるが,神田橋條治先生の提唱される,所謂「神田橋処方」のエキス剤を用いた加減運用の実際を解説し,責を果たそう.最近,とある文献に「神田橋処方」とさしたる説明もなく記載されているのをひとつならず目にした.今や「神田橋処方」は一般名詞的になっているのであろうか? しかし,本稿では出典から解説する.筆者がこの処方を初めて目にしたのは『臨床精神医学』誌9)である.そこで神田橋師は彼の所謂「PTSDのフラッシュバック」に桂枝加芍薬湯+四物湯が有効であると述べ,そのバリエーションとして,(桂枝加芍薬湯 or 桂枝加竜骨牡蛎湯 or 小建中湯)+(四物湯 or 十全大補湯)の3×2=6通りの処方に言及された9).師自身も「自分のPTSD概念は一般より広いものだ」といい,また厳密な意味でのPTSDに限るべき治療法でもないといえよう.筆者の感覚でいえば,鬱的症状を呈す症例で「昔の不快なイメージが浮かんできて」といった症状を訴えるケースなどにも応用可能と考える.さて,四物湯と桂枝加芍薬湯であるが,現在健康保険が使えるエキス製剤のなかにも,その加減方といえるものが多い.表2, 3にまとめる.表2, 3,各々から一方ずつとり組み合わせると,神田橋処方のバリエーションたりえると考える.表2に15方,表3に13方取り上げている,単純に組み合わせを考えると195通りとなる.筆者もすべての組み合わせを使用した経験はなく,また,すべてについて解説する余裕もないので,読者各々で,構成生薬の異同などを考えて工夫して運用してほしい.以下,紙数の許す範囲で,解説を付ける.そもそも筆者が初めて活字で「神田橋処方」を目にしたとき,その効能・効果に懐疑的であったことは