カレントテラピー 35-5 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.5 73代替療法477湯+去風止痒薬といえよう)当帰飲子に変更し,皮膚症状の改善をみた経験が,筆者をしてこのような文章を書かせている原体験であり,以下,具体的にいくつかの変方の解説を試みたい.まず,師の原方,四物湯+桂枝加芍薬湯で効果を感じるが便秘症状があるというような症例には桂枝加芍薬湯に大黄を加えた桂枝加芍薬大黄湯に変えてみるのは常識的な発想であろう.(以下,表2, 3のなかでの変方の説明と認識されたい)また,過多月経を伴うような症例には,四物湯を?帰膠艾湯に置き換えるのも自然だろう.(ちなみに,?帰膠艾湯は四物湯加味方といえるが,歴史的には?帰膠艾湯のほうが古く,またエキス製剤の適応保険病名として「痔出血」しかないが,本来は「過多月経などの婦人科的疾患」のための処方であることは申し添えよう.もちろん,痔出血を訴える患者に応用も可能だろう)いらいら,興奮しやすい,火照り・熱感などの「熱的症状」を伴う症例に関して言えば,「熱証」に対応する代表的方剤「黄連解毒湯」を加味したくなる.四物湯に黄連解毒湯を加えたものが温清飲であり,その温清飲の加味方といえるものが,荊芥連翹湯であり柴胡清肝湯でもある.本稿で筆者は,漢方方剤を「足し算的に理解しろ」とのメッセージを発したように受け取られよう(例えば温清飲=四物湯(血虚に対する基本処方)+黄連解毒湯(熱証対策)=血虚と熱証を同時に呈する症例向きの方剤).ある意味,確信犯的にそうしたつもりである.確かに,そういった単純な理解では対応できない場合もあると思えるが,読者の皆様には,まず「漢方方剤の足し算」を学んでほしい.多くの漢方方剤はそういった発想でつくられていると思える.中医方剤学の本をみると(例えば『実用中医内科表典』7))方剤の解説に続けて,随伴症状による加減に言及している.神田橋処方を構成する四物湯も桂枝加芍薬湯も,類方といえるものがエキス製剤にかなりあるといえる.微妙な加減がしやすい体系と思い紹介した.読者各々の工夫を期待する.本稿がその助けになれば,筆者として幸甚である.参考文献1)下田哲也:オモシロ漢方活用術.中外医学社,東京,20152)佐藤純一,下田哲也:落語的漢方のすすめ.中外医学社,東京,20143)神戸中医学研究会:中医学入門.医歯薬出版,東京,19814)神戸中医学研究会:中医臨床のための方剤学.医歯薬出版,東京,19925)神戸中医学研究会:中医臨床のための中薬学.医歯薬出版,東京,19926)神戸中医学研究会:中医処方解説.p224,医歯薬出版,東京,19827)余 海若:実用中医内科表典.中国科学技術出版社,北京,19938)土田献翼卿:癲癇狂経験編.精神医学神経学古典刊行会(復刻版),東京,1979(呉秀三「磯邉偶渉」の附)9)神田橋條治:PTSDの治療.臨床精神医学 36:417-433,2007