カレントテラピー 35-5 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.5 75479が完成した.これ以降,気分障害一元論が精神医学の主流となった.しかし,1960年前後から単極性うつ病と双極性障害を分離する気分障害二元論が提唱され1),その後の研究の発展から気分障害二元論が主流となり,気分障害は単極性と双極性が明確に区別されるようになった.この疾患概念はDiagnostic andStatistical Manual of Mental Disorders(DSM)- Ⅲに導入された.さらにDunnerら2)は,軽躁病を伴ううつ病を単極性うつ病と区別し,「双極性障害Ⅱ型」と命名した.双極性障害Ⅱ型は,双極性障害Ⅰ型や単極性うつ病とも異なる臨床像を示すことが明らかとなり,DSM - Ⅳにも取り入れられた.さらにDSM - 5では,それまで単極性うつ病と双極性障害は気分障害という大きなカテゴリーでくくられていたが,「双極性障害および関連障害」と「抑うつ障害群」は完全に独立したカテゴリーとされた.DSMの変遷をみると,単極性うつ病と双極性障害は全く別個の疾患として扱われるようになってきている.DSM改訂の流れからいけば気分障害二元論は確固たる地位を築いているように思われるが,現在の感情障害二元論に対しては大きな疑義が唱えられている.現在の診断基準,ひいては気分障害二元論では双極性障害の診断域が狭くなり,双極性障害として治療すべき群が見捨てられているとの主張である.気分障害二元論に対する批判者としてはAkiskalとGhaemiが有名である.Akiskalは,単極性うつ病患者のなかで躁病エピソードの診断基準以下であるが,軽微な躁症状を呈するものに注目し「soft bipolar spectrum」の概念を提唱した3)~5).またGhaemiら6),7)もAkiskalと同様に閾値以下の躁症状に注目し,「bipolar spectrumdisorder」の概念を提唱した(図).両者の概念には幾分かの違いがあるものの診断基準以下の躁症状を単極性うつ病から見出し,双極性障害に準ずる治療を提供しようとする理念は共通している.また誤解を恐れずに述べるならば,両者ともうつ病患者に躁症状があるかないかではなく,どの程度有するかに注目し,bipolarspectrumの概念を取り入れることで,Kraepelinの気分障害一元論に回帰しているのである.この二人の概念は臨床に即しており,臨床家に受け入れられた.またbipolar spectrumの概念とは別に,現在の診断基準を用いても,特に軽躁では患者の自覚に乏しいため単極うつ病をはじめ他の精神疾患に誤診され,双極性障害は見逃されているとの双極性障害過小診断論が主張されている8),9).これらとは逆に,現在は単極性うつ病やパーソナリティ障害,注意欠陥・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)などが双極性障害として誤診され,適正な治療がなされていないとの双極性障害過剰診断論も主張されている10),11).このように双極性障害は診断基準においても,その診断基準の運用についても議論の多い疾患である.われわれ臨床医は十分な診察を行い,過少や過剰診断をせず,適切な診断を行うことが必要である.Ⅲ 近年保険適用となったラモトリギン,オランザピン,アリピプラゾール本邦ではラモトリギン,オランザピン,アリピプラゾールが双極性障害に対し適応が追加された.今回この3剤について,近年発表された双極性障害におけDysthymiaChronicMDD PsychoticMDDUnipolar SpectrumDisorderBipolar SpectrumBPⅡBPⅠSingleMDEMDD=Major depressive disorder, MDE=Major depressive episodeAtypicalMDDRecurrentMDD Cade’sDisease図The affective spectrum〔参考文献7)より引用〕