カレントテラピー 35-5 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.5 77治療薬解説481用はラモトリギンの血中濃度を上昇させるため,バルプロ酸との併用時は必ず用法・用量を遵守すべきである.忍容性での他の特徴は妊娠に関してである.ラモトリギンは催奇形性が少ないと考えられており,最近のシステマティックレビュー21)でもラモトリギンの単独投与では大奇形発生のリスクは上昇させないと報告されている.一方,リチウムやバルプロ酸は催奇形性があることがよく知られており,双極性障害の維持療法は長期にわたるため,妊娠の可能性がある女性に対しては使用を検討すべき薬剤である.また妊娠中の葉酸補充は胎児の催奇形性を低下させることが知られており,妊娠中の摂取が推奨されている.しかしGeddesら22)は,ラモトリギンのセロクエルへの上乗せは双極性うつ病に対しての効果を増強するが,葉酸の使用によりラモトリギンの上乗せ効果は無効化されると報告した.つまり葉酸とラモトリギンの併用は,ラモトリギンの抗うつ効果を打ち消すと主張した.この結果からすぐにラモトリギンと葉酸の併用を避けるとの結論に至るのは極論であり,今後の研究の発展が待たれる.2 オランザピンについてオランザピンは2001年に統合失調症への適応が承認され,引き続いて2010年に双極性障害の躁症状に,そして2012年に双極性障害のうつ症状への適応が追加された.オランザピンの保険適用は「双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善」であり,維持療法の適応は認められていない.双極性うつ病に対してその効果はよく知られており,双極性うつ病の急性期治療においてはプラセボと比較して有意にうつ状態を改善し,躁転の危険性および離脱における忍容性に関してはプラセボと同等であった12).リチウムとの比較ではうつ症状の改善,躁転の危険性および離脱における忍容性は同等であった12).双極性うつ病の治療としてBAP15)では推奨薬に挙げられているが,CANMAT16)では双極Ⅰ型のthird lineである.躁病相の急性期治療においてオランザピンは有効性および忍容性ともに有意にプラセボに優り,リチウムに対しては有効性では同等であったが忍容性では上回っていた13).BAP15)では推奨され,CANMAT16)ではfirst lineに位置づけられている.維持療法ではオランザピンは有意にプラセボと比較して病相予防効果は優れ,忍容性ではプラセボと同等であった14).リチウムとの比較では有効性・忍容性ともに同等であった14).BAP15)では推奨され,CANMAT16)では双極Ⅰ型ではfirst line,Ⅱ型ではthird lineに位置づけられている.サブ解析ではオランザピンの双極性障害の病相予防は躁病相予防効果が主であり,うつ病相の予防効果は示せなかった14()表2).これらからオランザピンは双極性障害のうつ病相および躁病相急性期に加え病相予防効果も有し,いずれの病相でも効果が期待できる薬剤であると思われる.ただし,うつ病相を繰り返す場合の維持療法では他の薬剤を考慮すべきである.また,オランザピンについては本邦未発売の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptakeinhibitor:SSRI)であるfluoxetineの併用療法が双極性うつ病相に有効であることが明らかになっており12),他のSSRIとの併用も有効である可能性がある.オランザピンの副作用としては長期投与での代謝性の副作用が問題になる.糖尿病を悪化させるため,糖尿病患者に対しての使用は禁忌である.今回維持療法の参考とした論文14)は12週以上の研究を対象としているが,代謝性の副作用はより長期の使用で出現することが多く,長期の維持療法を実施する臨床においては忍容性が今回の紹介した研究より悪化する可能性があるので注意が必要である.また喫煙はオランザうつ病相急性期躁病相急性期維持療法プラセボとの比較有効性○ 忍容性= 有効性○ 忍容性○ 有効性○注5 忍容性=リチウムとの比較有効性= 忍容性= 有効性= 忍容性○ 有効性= 忍容性=BAPでの推奨度注1 推奨推奨推奨注3CANMATでの推奨度BPⅠthird lineBPⅡ推奨なしBPⅠfirst line BPⅠfirst lineBPⅡthird line表2オランザピンの位置づけ凡例は表1 と同様.注1:維持療法を行っていない場合,注3:リチウムに有効性・忍容性がないとき推奨,注5:うつ病相予防効果はなし