カレントテラピー 35-5 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.5 7411うつ疾患の診断と鑑別― 双極性障害を中心に―企画小山富士見台病院院長加藤 敏躁うつ病は,人類の歴史において最初に記載された精神疾患で,古代より現代にいたるまで時代や文化の違いを超えてずっと観察されている.精神疾患(ないしその前駆状態)と創造性との関連がしばしば問題にされるが,そのなかでも躁うつ病は創造性との関連が強い.わが国では精神科医でもあった北杜夫がその良い例で,株に熱を入れ巨額の借金をかかえるといった躁病相と,布団に入ったままの状態が続くうつ病相を繰り返した典型的な躁うつ病を患いながら,多数の見事な作品を残した.活動性に富む(病院経営者を含む)実業家や学者のなかにも躁うつ病をかかえる事例は少なくない.総じて,躁病相時の暴走は憎めないユーモラスな印象を与えてくれる躁うつ病は,多くの人に親近感を与えてくれる精神疾患ではないだろうか.高度資本主義が台頭し,一層忙しさを増す労働環境においては,うつ病だけでなく,躁うつ病が過労死の重要な予備軍として挙げられる.また,超高齢社会が進むなか,認知機能が大なり小なり低下する一方,生活環境が変化するなかで,高齢で初発するうつ病や躁病が問題になってきている.さらに,病名告知がルーチンになっている医療現場においては,将来について深刻な心配をさせずにはおかない病気,例えばがんを告げられた当人,あるいは家族同胞が気分障害を発症することも多くなっている.このように,現代日本において,躁うつ病は以前に比べ多様な病態を呈し,診断,治療も新たに考慮すべき事項は増えてきている.このたび「うつ疾患の診断と鑑別─双極性障害を中心に─」と題し,双極性障害に焦点をあてた特集をする機会を与えられた.内科,外科など臨床に携わる多職種の方すべてに参考になるよう,躁うつ病に代えて双極性(感情)障害の術語が主流となった概念の変遷を皮切りに,双極性障害の薬物療法,認知行動療法,また児童・思春期,老年期など世代別の病態と特性・治療,あるいは生物学的マーカーなど,さまざまな角度から双極性(感情)障害の新たな知見を第一線の方にご執筆いただいた.双極性障害には糖尿病,高血圧,脂質異常症など,メタボリック症候群との合併も多い.筆者は中年の双極性障害をメタボリック症候群の一翼を担うとみたほうが理解しやすいとの思いを強くしており,臨床科横断的に病態解明,治療にあたっていくのがふさわしい疾患だと考えている.ご一読いただければ幸いである.エディトリアル