カレントテラピー 35-5 サンプル

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10 Current Therapy 2017 Vol.35 No.5414機能亢進症など),薬剤性精神障害(覚醒剤,副腎皮質ステロイドなど)でも躁状態は生じ得るので鑑別を要する.躁病,うつ病の出現がなく軽躁病エピソードのみが出現し,器質性精神疾患あるいは統合失調症が除外される場合には,他の特定される双極性障害(DSM - 5)と診断され,うつ病エピソードが出現して初めて双極Ⅱ型障害と診断される11).診断基準を満たす抑うつエピソード(DSM - 5)を呈する患者は通常大うつ病性障害として診断されるが,その約1割は双極性障害であり,残念ながら避けられない誤診といわざるを得ない.大うつ病性障害と診断された患者の5~10%は初回の抑うつエピソードの5~10年後に躁病エピソードを呈する.しばしば2~4回目のうつ病エピソードの後に躁病エピソードが出現する11).非難治性うつ病に比べて,難治性うつ病では双極性障害に診断変更となる割合が約3倍多いが,双極性障害に診断変更となる難治性うつ病の80%は双極Ⅱ型障害である14).抑うつエピソードでも器質性精神疾患,統合失調症との鑑別を要する.このように,基本的に,双極性障害よりも器質性精神疾患,統合失調症を優先して診断し,大うつ病性障害よりも双極性障害を優先して診断したほうがよい.何故ならば,身体症状,血液検査所見,記憶障害から器質性精神疾患を,幻聴・被害妄想他シュナイダーの一級症状の存在から統合失調症を,軽躁病・躁病エピソードの存在から双極性障害を確定診断することはできるが,その逆はないからである.つまり,うつ病症状だけから大うつ病性障害を確定診断することはできない.この診断原則は階層原則として古くから知られており,この原則に基づくことにより誤診を防ぐことができる.2 これまでの躁病あるいは軽躁病を見逃さないことの重要性(避けられる誤診)双極性障害と大うつ病性障害との鑑別診断では,過去の躁病あるいは軽躁病エピソードの既往を見逃さないことが重要である.そのためには,まず患者本人と周囲の人に躁病・軽躁病の症状と概念について詳しく説明して理解してもらい,過去のエピソードを繰り返し確認することが必要である.最近の一般住民(10歳代~70歳代)に対するインターネット調査では,うつ病を認知している割合(およそどんな病気か知っている,どんな治療法があるか知っている,人の割合)が87.8%であったのに対して,躁うつ病を認知している割合は55.2%,双極性感情障害を認知している割合はわずかに9%であった15).すなわち,うつ病はどんな病気かわかるが,躁病についてはよく知らない人が多いということをこの調査結果は意味している.過去の躁病・軽躁病エピソードをスクリーニングする自記式質問紙Manic Episode Screening Questionnaire(MES)を筆者らは作成した(表1)16).双極性障害と大うつ病性障害を合わせた気分障害患者における解析では,質問1に「はい」と答えた場合,感度0.75,特異度0.93,陽性的中率0.81,陰性的中率0.90,正確度0.87で双極性障害をスクリーニングすることができた(1 質問法).このMESはDSM -Ⅳ-TR(DSM- 5もほぼ同じ)の躁病・軽躁病エピソードの診断基準8項目を口語調にわかりやすくアレンジしたものであり,質問1が陽性で,項目2~8のうち3項目以上陽性の場合に躁病・軽躁病エピソードを高い特異度でスクリーニングできるのではないかと考えて作成した(アルゴリズム診断法).しかし,実際に患者につけてもらうと,アルゴリズム診断法では感度0.68,特異度0.94,陽性的中率0.83,陰性的中率0.88,正確度0.86であり,1質問法とほぼ同じであった.したがって,気分障害患者で過去の躁病・軽躁病エピソードをスクリーニングする目的であれば1質問法のみで十分である.そのほかにMESは患者と家族に躁病の症状と概念を説明することにも利用できるし,患者と家族が病状をモニターするためにも利用することができる.つまり,スクリーニング,心理教育,セルフモニタリングの3つの目的にMESを利用することができる.生活史を詳しく問診することが過去の躁・軽躁病エピソードをみつけるヒントとなることが多い.転職,投資,借金が唐突で了解可能とはいえない場合は躁・軽躁病エピソードを疑う.Akiskalは“3の法則”がうつ病患者で双極性をみつけるヒントになることを提唱した17).“3の法則”とは,3回を超える大うつ病エピ