カレントテラピー 35-5 サンプル

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Current Therapy 2017 Vol.35 No.5 11双極性障害の診断と治療415ソード,3回の離婚,3回の抗うつ薬への非反応,第1度親族に気分障害患者が3人いること,3 つの仕事の兼業,3 つの不安障害併存,などである.最近の大規模な研究では,3回以上の宗教変更,3回以上の自動車事故などが双極性障害と大うつ病性障害を区別する指標であることが多変量解析により明らかになった18).3 “避けられない誤診”の克服を目指して躁・軽躁病エピソードが出現するまでは双極性障害患者は大うつ病性障害と診断される.この誤診は“避けられない誤診”ともいえる.NIMH長期追跡研究では,大うつ病性障害から双極性障害への診断変更の有意な予測因子は,閾値下軽躁症状の数,精神病症状,低発症年齢,第1度親族における双極性障害の家族歴の4つであった19).特に大うつ病エピソードに併存する診断基準を満たさない軽躁症状が3 つ以上であると感度16%,特異度95%,陽性的中率42%,陰性的中率82%で将来の双極性障害診断を予測した.大うつ病エピソードに診断基準を満たさない閾値下の3個以上の軽躁症状が併存する場合,混合性うつ病とよばれる.海外では故Benazziが膨大な臨床研究を行い,わが国では武島稔先生が混合性うつ病を詳細に研究してきた20).混合性うつ病は,双極性障害に多い,双極性障害の家族歴が多い,双極性障害に移行する大うつ病で多い,抗うつ薬で躁転しやすい,抗うつ薬により悪化しやすい,などの特徴を有する20).混合性うつ病では,診断基準を満たさないとはいえ躁・軽躁症状が相当数存在することから,双極性障害を強く疑って慎重に診断と治療をなすべきであると思われる.しかし,日常臨床では,うつ病症状を主訴・主症状とする患者に詳細に躁症状の数を確認することは必ずしも行われていないと思われるので,混合性うつ病は見逃されることも少なくない.表1の躁病エピソードスクリーニング質問紙の使用法を変更して,質問1~8の症状が現在あるかどうか答えてもらうと混合性うつ病を検出しやすい.上記の混合性うつ病を含め,躁・軽躁病エピソードの既往以外の臨床特徴から双極性障害を診断する試みも研究されている.武島らは,Ⅱ型および特定不能の双極性障害と大うつ病性障害を区別する5因子を多重ロジスティック回帰分析により特定した(表2)21).5因子のうち2因子以上該当すると高い特異度(感度70.0%,特異度97.5%)で双極性障害と診断可能で以下の質問があなたにあてはまりましたら「はい」に○を,あてはまらなければ「いいえ」に○をつけてください.1. これまでの人生で,気分高揚し,ハイテンションで,怒りっぽく,普段の調子(100%)を超えた時期が数日以上続いたことがありますか? はいいいえ1で「はい」に○をつけた方は以下の質問にお答え下さい2.その時,いつもより自信がありましたか? はいいいえ3.その時,あまり寝なくても平気でしたか? はいいいえ4.その時,いつもよりよくしゃべりましたか? はいいいえ5.その時,いろいろな考えが次々に思いつきましたか? はいいいえ6.その時,次々に関心や興味がうつりましたか? はいいいえ7.その時,活発・精力的に活動できましたか? はいいいえ8.その時,買い物・賭け事・投資・異性との交際などが多くなりましたか? はいいいえ表1躁病エピソードスクリーニング質問紙〔参考文献16)より引用〕表2 Ⅱ型および特定不能の双極性障害と大うつ病性障害を区別する5 因子1.4回以上の大うつ病エピソード(MDE)2.第1度親族の双極性障害家族歴3.循環気質4.初回MDEが若年発症(25歳未満)5.抑うつ混合状態(混合性うつ病)〔参考文献21)より引用〕