カレントテラピー 35-8 サンプル

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76 Current Therapy 2017 Vol.35 No.8790れる現象であり,生体にもともと備わっている.血管新生には促進因子と抑制因子が関わり,通常均衡が保たれているが,悪性腫瘍では増大するのに必要な酸素や栄養を得るために,促進因子が増加し血管新生が亢進する.血管新生促進因子のなかで最も重要な役割を果たす因子のひとつがVEGFであり,VEGFfamilyのうち代表的なものがVEGF -Aである.低酸素状態をトリガーとして腫瘍細胞からVEGF -Aが分泌されると,血管内皮細胞に存在する受容体(主にVEGFR- 2)に結合し,血管内皮細胞の増殖,遊走,生存を促進する.腫瘍血管は構造が未熟で透過性が亢進していて,血漿成分の漏出により間質圧は上昇し,血流低下をもたらすため,血管が豊富なわりに,腫瘍組織は低酸素状態となっている.また,血管径は不均一で無秩序に走行するため,低酸素状態を助長する.これが,放射線治療や抗がん剤抵抗性の一因となっている.悪循環に陥ったVEGF産生とそのシグナル伝達を遮断すべく,開発された薬剤が血管新生阻害薬である.VEGF -Aに対するヒト化モノクローナル抗体であるBevは,VEGF -Aに結合することで,VEGF -Aが受容体(VEGFR - 1,VEGFR - 2など)に結合するのを阻害する.一方Ramは,VEGFR- 2に対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のヒト型モノクローナル抗体である.VEGFR - 2に結合することで,VEGFリガンドが結合するのを阻害し,VEGFR- 2の活性化が抑制される.これらの結果,血管内皮細胞の増殖,遊走および生存が制御され,腫瘍における血管新生を阻害することで抗腫瘍効果が発揮される.さらに間質圧を低下させることで,併用する抗がん剤が腫瘍組織に到達し効果が増強される.Ⅲ 血管新生阻害薬のエビデンスBevが初めて臨床に導入されたのは,2004年2月に米国食品医薬品局(FDA)で進行・再発の大腸がんに承認されたときである.本邦では2007年4月に同適応で承認され,進行・再発の非小細胞肺がんに適応拡大されたのは2009年11月であった.Ramも,二次治療においてDTXとの併用により全生存期間(overallsurvival:OS)の延長を証明し,2016年6月に非小細胞肺がんに承認された.1 ベバシズマブ1)プラチナダブレットとの併用療法(図1)進行・再発非小細胞肺がんを対象に米国で行われた第Ⅱ相試験(AVF - 0757g試験)において,カルボプラチン/パクリタキセル(CP)療法群(非併用群),低用量Bev併用群(7.5mg/kg)と,高用量Bev併用群(15mg/kg)が,2つの主要評価項目time to progression(TTP)と奏効率を用いて比較された(表)2).TTP中央値は,非併用群4.2カ月に対して,低用量群4.3カ月,高用量群7.4カ月〔p=0.023(investigatorassessment)〕と,高用量群が最も優れていた.奏効率も,非併用群18.8%,低用量群28.1%,高用量群31.5%と,高用量群で良好な結果であったが,Bev併用群において重篤な喀血が6例に発現し,うち4例が死亡し,扁平上皮がん,空洞病変,中枢病変などが血管新生VEGF-AVEGFR-2ベバシズマブラムシルマブがん細胞血管内皮細胞図1血管新生阻害薬の作用機序