カレントテラピー 35-9 サンプル

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70 Current Therapy 2017 Vol.35 No.9884法と化学療法の組み合わせが適応とされた.また,2017年の会議におけるvotingでは,パネリストの79%がER, PgR, Ki67によってluminal A-likeとB-likeを分類する方法(代替的方法)に賛同している3).このように,Ki67 labeling index(LI)に対する免疫組織染色は,乳癌の治療方針の決定を行ううえで必要不可欠な検査項目となっている.Ⅱ Ki67とはKi67は細胞周期関連分子(細胞増殖マーカー)のひとつで,G0期以外の細胞周期において核に発現を示す(ただし,G 0期から初めてG1期に移行した細胞核には発現しない).また,G1前期は核内のヘテロクロマチン領域に,G1後期は核小体に,S期からG2期にかけては核小体および核質に発現している.ヒトKi67 遺伝子は10番染色体の長腕(10q26.2)に存在しているが,蛋白としての機能の詳細はいまだに不明な点が多い.細胞増殖の評価法として,核分裂数をカウントする方法があり,腫瘍によっては強拡大10視野あたりの個数(通常,腫瘍内の最大数を採用する)などとして表現されている.しかし,この方法は視野中の対象細胞の数(細胞密度)や,顕微鏡の特性(接眼レンズの種類によって顕微鏡ごとに視野の広さが異なり,視野数として示される)にも影響される.それに対して,Ki67は細胞周期全体を反映するために陽性細胞の比率がより高く,免疫組織化学により,対象細胞中の陽性核の比率をLIとして計測するため,具体的な数値として示される.Ⅲ Ki67の計測:現状と課題それでは,Ki67LIを計測するにあたり,どのような点に注意すべきか,また課題はなにかを整理してみたい.最大の問題として,ER,PgR,HER 2はそれぞれ体外診断薬として承認された染色手法と判定方法が定められているのに対し,Ki67は標準化が十分になされておらず,現在に至るまで各施設の努力と工夫に任されている.1 検索の対象Ki67LI計測の主目的はluminal A -likeとluminalB -likeを判別するためのものであるから,対象となる症例はホルモン受容体陽性,HER2陰性の浸潤性乳癌である.しかし,最初にH -E染色標本を観察し,診断の確認をした後にER, PgR, HER2とともにKi67を臨床的なグループ注意事項トリプルネガティブER, PgR, HER 2 がいずれも陰性ホルモン受容体陰性・HER 2 陽性ASCO/CAPの基準に従うホルモン受容体陽性・HER 2 陽性ASCO/CAPの基準に従うホルモン受容体陽性・HER 2 陰性ERおよび/ またはPgR の陽性率1%以上Luminal 型ホルモン受容体高発現・増殖能低率Multigene assay で低リスクも代用可.低悪性度癌(luminal A-like) ER/PgR強陽性とKi 67 が明らかに低率リンパ節転移なしまたは少数(0~3個)腫瘍サイズ小(T 1,T 2)中間型Multigene assay で中間リスクも代用可.ホルモン受容体低発現・増殖能高率Multigene assay で高リスクも代用可.高悪性度癌(luminal B-like) ER/PgR弱陽性とKi 67 が明らかに高率より多くのリンパ節転移,組織学的悪性度3,高度脈管侵襲,腫瘍サイズ大(T 3)[注意事項]ER 1~9%はあいまいな判定結果である.Ki67の陽性率は施設ごとに明らかな低率および高率の基準を策定しなければならない(例:乳癌全例の平均が20%であれば10%以下,30%以上とする).すべてのmultigene assayが中間リスクのカテゴリーを設けているとは限らない.表治療に即した乳癌の分類(St.Gallen国際コンセンサス会議より)〔参考文献2)より改訳〕