カレントテラピー 35-9 サンプル

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カレントテラピー 35-9 サンプル

Current Therapy 2017 Vol.35 No.9 71代替療法885同時に追加染色している施設は決して少なくない.Ki67は予後因子としての意義もあり4),他の3つと合わせて「IHC4スコア」も提唱されている5).また,術前薬物療法の効果予測や,治療によるLIの減少率が再発予測の指標となることも指摘されている6).これらは本稿の内容とは異なる用い方ではあるが,乳癌診療を行ううえでは知っておく必要がある.検体は,針生検標本,手術標本のいずれを用いても良い(格別の決まりは定められていない).複数の組織標本が存在する場合にはそのなかから代表的切片を(通常は1枚)選定する.また,tissue microarray(TMA)標本を用いている施設もある.後に述べるように,腫瘍内の染色性にはheterogeneityが生じ得るので,判定部位の選定は重要である.その意味では,手術標本のうち,多くの浸潤巣を含むブロックを選択するのが最も望ましいようにも思われるが,針生検標本と手術標本をともに染色している施設もある.2 標本作製過程より正確に,再現性が高い判定を行うためには,免疫染色標本が作製される過程の精度管理が重要である.Ki67の病理学的検索は,ホルマリン固定・パラフィン包埋標本を用いて行われる.ホルマリン固定条件はHER 2の検索に準じ,10%中性緩衝ホルマリンにより6時間以上72時間以内の固定が推奨される.パラフィン包埋された標本は型通り薄切し染色を行うが,長く切り置きした標本では染色性が低下しLIが低くなることが指摘されており,注意が必要である.薄切後は室温で保存し,少なくとも14日以内に染色を実施する必要がある.抗血清については,MIB - 1抗体を使用している施設が多いと思われる.MIB - 1はモノクローナル抗体のクローン名であり,他にもさまざまな抗Ki67抗体(クローン名:SP6, Ki-S5, MMI, Ki88, 30- 9などのモノクローナル抗体,およびポリクローナル抗体)が市販されている.最近は自動免疫染色装置を利用している施設が多いため,機器に合わせた抗血清が推奨されている場合もある.いずれも,一次抗体の反応前に,加熱処理などの抗原賦活を行うことが望ましいとされている.また,対象細胞中の陽性細胞数(陽性細胞核)をカウントすることから,陰性細胞も明らかにするためにヘマトキシリンによる核染(対比染色)が十分になされているべきである.なお,抗血清の種類によっても,Ki67LIの値は異なる可能性があるが,それぞれの特性の差に関する検証は行われていない.免疫組織染色では,陽性および陰性コントロールを置いて染色性の検証をする必要があるが,Ki67の場合,腫瘍とともに染色される正常乳管や,浸潤リンパ球などが内因性コントロールとして有用である.3 Ki67LIの判定LIは,浸潤癌細胞中の陽性細胞の率である.標本内に存在する非癌上皮,間質細胞,炎症細胞,および非浸潤癌成分は計測から除外される.したがってH -E染色標本との対比が必要である.また,非浸潤癌成分を除外するために,筋上皮細胞に対する免疫組織染色(p63, calponin, CD10など)を併用することがある.腫瘍細胞の染色性は腫瘍内において均一とは限らない.部位により陽性率に差が見られるだけではなく,染色強度も細胞ごとに差がみられることが少なからず経験される.したがって,カウントする前に部位を選定する作業はきわめて重要である.例え1本の針生検であっても数千個の浸潤癌細胞を含むことが少なからず経験されるため,手術標本に準じた方法で検索することが推奨される.最初に弱拡大~中拡大で,腫瘍標本全体を観察し,染色態度の概要を把握する(図1).次に,拡大を上げて個々の浸潤癌細胞の染色性を観察する(図2).評価部位はhot spotを用いるか,平均的部位を採用するか,定められていない7).ホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌に対する術前ホルモン治療後の予後予測のためには,hot spotの計測が平均的部位よりも優れていたとする報告がある8)一方で,国際共同研究では平均的部位の計測を推奨する傾向がある9)~11).また,組織学的グレード分類では腫瘍先進部(invasivefront)における核分裂像の計測が想定されていたが,Ki 67についてはそのような規定はない.計測の標準化のためには,今後さらなる検討が望ましい.なお,著者も参加している国際共同研究グループでは,TMA10),針生検11)での検証に続いて手術標本における判定の再現性について検証中である.