カレントテラピー 35-9 サンプル

カレントテラピー 35-9 サンプル page 27/34

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 35-9 サンプル の電子ブックに掲載されている27ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 35-9 サンプル

Current Therapy 2017 Vol.35 No.9 75889不在によりDNA修復が行われず,細胞死に至る.この現象は合成致死(synthetic lethality)と称され,PARP阻害薬は合成致死のメカニズムを利用して腫瘍細胞を死滅させる.Ⅲ PARP阻害薬の種類と承認および臨床試験の進行状況PARP阻害剤には,olaparib, niraparib, rucaparib,veliparib, talazoparibなどがある(表1)1),2).なかでもolaparibは2014年にEMAとFDAによって卵巣がん治療薬として承認され,その適応はEMAとFDAとで異なる.EMAはBRCA1/ 2 生殖細胞系列変異(gBRCA1/2 m)または体細胞変異(sBRCA1/2 m)を有する卵巣癌,卵管癌および腹膜癌で,プラチナ感受性および高異型度漿液性癌の組織型を適応とし3),FDAは3回以上の化学療法の治療歴を有するgBRCA 1 / 2 変異陽性の進行卵巣癌を適応とした4).Olaparibは,現時点(2017年5月)で最も実地臨床への導入および臨床試験が施行されているPARP阻害薬である.Ledermannらはプラチナ感受性漿液性卵巣癌患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験で,olaparib投与群の無増悪生存期間(progression -free survival:PFS)が有意に延長することを報告した(p<0.0001)5).2017年の米国婦人科腫瘍学会(Society ofGynecologic Oncology:SGO)においては,olaparib単剤維持療法の評価を目的とした第Ⅲ相臨床試験であるSOLO- 2試験の成果が脚光を浴びた6).SOLO- 2試験はBRCA1/2 変異陽性のプラチナ感受性再発卵巣癌に対してolaparib錠(300mg 1日2回)を投与したところ,プラセボ群に対してPFSが有意に延長したというものである(ハザード比0.30;95%信頼区間0.22to 0.41;p< 0.0001;中央値19.1 カ月対5.5 カ月).2016年にはBRCA1/2 またはATM 変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺癌(metastatic castration-resistantprostate cancer:mCRPC)に対してFDAは迅速審査である画期的治療薬指定(Breakthrough TherapyDesignation)を付与された7).その他2016年にはniraparibが,再発性プラチナ感受性卵巣癌,卵管癌および腹膜癌に対して,FDAが優先承認審査制度(Priority Review)で承認されている.乳癌領域における臨床試験を表2に示す.Ⅳ PARP阻害薬の感受性予測因子PARP阻害薬の感受性予測因子は,その作用機序と深く関連している.PARP阻害薬のコンパニオン診断として,BRCA1/2 変異のみならずDNA損傷修復メカニズム異常をとらえる必要がある.前述のとおり,BRCA1/ 2が機能しない細胞にPARP阻害薬を投与すると,BRCA1/2の相同組換え修復機能と,PARPの塩基除去修復機能の双方とも働かなくなり,その結果,合成致死が誘導される.BRCA1/ 2 など,相同組換えに関与する遺伝子はhomologous recombination(HR)遺伝子と称される.なお,HR遺伝子の変異によりBRCA1/2 の変異が存在しないにも関わらずHRDを生ずる状態は,特にBRCAnessと称されることもある8).HRDを生じ得る遺伝子としては,BRCA1/2 以外にATM ,CHEK2 ,RAD51C ,RAD51D ,FANCA など,複数の遺伝子が知られており,これらの変異状態をスコア化したこれらのコンパニオン診断キットが実PARPi PARP inhibition(IC 50)In vitroCytotoxicityIn vitro PARPtrappingOlaparib 1.2~6 nmol/L ++ ++Niraparib 50.5 nmol/L +++ +++Rucaparib 21 nmol/L ++ ++Veliparib 10.5 nmol/L + +Talazoparib 4 nmol/L ++++ ++++表1PARP阻害薬の種類とPARP阻害能〔参考文献1),2)より引用改変〕