カレントテラピー 36-11 サンプル

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28 Current Therapy 2018 Vol.36 No.111068Ⅰ はじめに頸動脈エコー検査1)では頭蓋外動脈である総頸動脈,頸動脈分岐部,内頸動脈起始部,椎骨動脈の観察が可能である.脳卒中臨床においては,頸動脈分岐部の狭窄・閉塞は脳梗塞の原因として頻度が高く,その診断が重要であり,脳梗塞患者では全例が本検査対象となる.また,同部位は動脈硬化好発部位でもあり,頸動脈超音波検査では,早期動脈硬化を血管内膜と中膜をまとめて,内膜中膜複合体厚(intima-media complex thickness:IMT)として評価する.また限局した隆起病変であるプラークは,単なるIMT肥厚よりステージの進んだ動脈硬化病変と考えられ,その存在の有無や最大プラーク厚(最大IMTと表示されることも多い)も併せて記載しておくようにする.頸動脈IMTは年齢,高血圧,糖尿病,脂質異常など,各動脈硬化危険因子と関連するとともに将来の脳卒中,心筋梗塞の独立した予測因子であることが複数の疫学研究より明らかにされ,今日アテローム血栓症のサロゲートマーカーとして最も確立されている.そのためスタチン,各種降圧薬,経口血糖降下薬の抗動脈硬化作用の指標とした臨床介入試験も多く報告されている.Ⅱ 評価方法臥位または坐位で検査を行う.超音波診断機器はduplex法とカラードプラ法が可能なものが望ましく,プローベは中心周波数7MHz以上のリニアプローブを用いる.頸動脈の表示法は原則的に短軸像では画面の左側に頸動脈の右,長軸像では画面の左側に心臓側を表示する.カラードプラはプローベから遠ざかる血流を青,近づく血流を赤で表示することにする.被験者は一般的に仰臥位で行うほうが多いが,坐位で行うことも可能である.枕をはずし,観察する頸動脈と逆方向に首を軽く傾け,少し顎を* 東京女子医科大学脳神経内科教授動脈硬化の早期診断法と予防対策─ 健康寿命延伸をめざして頸動脈エコー北川一夫*頸動脈エコーによる頸動脈の内膜中膜複合体厚(intima-media complex thickness:IMT),頸動脈プラークの観察は形態的にとらえることのできる最も早期の動脈硬化変化と考えられている.動脈壁のより早期の変化は,血管弾性の低下,血管内皮機能の低下など,より機能的なものであるが,頸動脈エコーによってとらえることのできる早期動脈硬化性変化は,まさに心筋梗塞や脳卒中に繋がる動脈硬化の初期変化を見ている可能性が高い.実際,頸動脈の動脈硬化性変化と心血管事故発生の密接な関連性は,多くの疫学研究から裏づけられており,今日人間ドックの健診項目にも頸動脈エコーが取り入れられている.