カレントテラピー 36-11 サンプル

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カレントテラピー 36-11 サンプル

Current Therapy 2018 Vol.36 No.11 79代替療法1119発症に関与している可能性が示唆された.冠動脈疾患以外の動脈硬化性疾患である頸動脈狭窄症や一過性脳虚血発作を有する患者の腸内細菌叢においても,Bacteroides 属の割合は低下しており13),Bacteroides属の割合の低下は,動脈硬化性疾患患者に普遍的な特徴の可能性がある.そこで現在われわれは,糞便16S rRNAのメタゲノム解析や定量PCRにより,Bacteroides 属のどの種が冠動脈疾患発症と関連するか,またどのような機序で疾患発症に寄与するのかを明らかとする研究を行っている(図3).そのなかで,冠動脈疾患患者の腸内細菌叢でその割合が有意に低下していたBacteroides X を動脈硬化モデルマウスに投与すると動脈硬化形成が抑制されたことから,ヒトにおいてもBacteroides X の低下が動脈硬化形成に繋がっていることが示された.Ⅳ 腸から動脈硬化を制御するわれわれは動脈硬化性疾患が慢性炎症により引き冠動脈疾患群健常群(%)コントロール群冠動脈疾患100806040200コントロール群EnterotypeⅢEnterotypeⅡEnterotypeⅠBifidobacteriumLactobacillalesBacteroidesPrevotellaClostridium IVClostridium XIVaClostridium IXClostridium XIClostridium XVIIIothers健常群図2 冠動脈疾患患者の腸内細菌叢冠動脈疾患患者の腸内細菌叢を,コントロール群,健常群と比較した.(左図)各群の代表的な3例の腸内細菌叢を示す.Bacteroidetes 門(Bacteroides 属やPrevotella 属)は,コントロール群や健常群と比べて,冠動脈疾患群で有意に低下している.(右図)冠動脈疾患患者はBacteroides 属が優勢菌のエンテロタイプⅠが少ない.〔Emoto T, et al:J Atheroscler Thromb 23(8):908-921, 2016より抜粋,一部改変〕コントロール患者冠動脈疾患患者vs.①患者糞便を採取し,16S rRNA解析/メタゲノム 解析により差異のある腸内細菌種Xを同定.腸内細菌種X②腸内細菌種Xをマウスに経口投与し, 因果関係と機序の解明.③機序がヒトで再現できるかの検証.図3われわれが行っているトランスレーショナルリサーチわれわれは,臨床研究から得たデータをもとに,基礎研究により,疾患と菌との関連や疾患発症機序を解明する研究を行っている.最終的には,成果を実臨床に応用できるよう,多くの企業・大学と連携しながら,腸内細菌を標的とした治療の開発に繋げたい.