カレントテラピー 36-11 サンプル

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84 Current Therapy 2018 Vol.36 No.111124過剰なインフラマソーム形成が不適切で持続した炎症を惹起し,動脈硬化を形成すると考えられている.以上から炎症を抑えることにより,脂質や血糖などのコントロールを介さず動脈硬化,心血管イベントを抑制しうる可能性があり,抗炎症をターゲットとする創薬が期待されていた.そこで,IL -1βをターゲットとしてカナキヌマブ,アナキンラが,IL -6をターゲットとしてトシリズマブ,低用量のメトトレキセートが想定されている.この稿ではカナキヌマブについて述べる.Ⅲ カナキヌマブとはカナキヌマブはマウスハイブリドーマ細胞Sp2/0-Ag14で発現させたヒトIL -1βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG(immunoglobulin G:IgG)1モノクローナル抗体で,ノバルティス社が開発した薬剤である.IL -1βに結合しIL -1βのIL -1β受容体への結合を阻害することで生物活性を中和し,IL -1βを介する炎症を抑える.本剤は希少疾病用医薬品として世界70カ国以上で承認され,本邦では,①クリオピリン関連周期性症候群②既存治療で効果不十分な家族性地中海熱③TNF受容体関連周期性症候群④高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)に対する希少疾病用医薬品の指定を受け承認されている.薬剤の剤形は注射薬で,皮下注射により投与する.投与量は通常,体重40kg以下の患者にはカナキヌマブとして1回2mg/kgを,体重40kgを超える患者には1回150mgを上記疾患①では8週毎に投与し,②~④では4週毎に投与する.Ⅳ カナキヌマブの心血管への影響―CANTOS trialより―カナキヌマブが心血管イベントを抑制するかを検討するために組まれた臨床試験がCANTOS trial(canakinumab anti-inflammatory thrombosis outcomestudy)である7).この試験でもしカナキヌマブが心血管イベントを抑制できれば,2つの点で画期的である.まず,炎症そのものを抑えることにより,脂質などの血液のパラメーターのコントロールを介さずに心血管疾患の発症を抑えることができたことで,今までの心血管イベント抑制の概念に新たな知見が加えられたことになる.さらにカナキヌマブという他の炎症性疾患の治療薬が心血管疾患の発症を抑制できれば,心血管疾患の新規治療薬開発という点で新たな方向性を与えられることになる.以下,この臨活性化IL-1β活性化IL-1βPro IL-1βIL-6コレステロール結晶低酸素血流の乱れ好中球の細胞外捕捉caspase1PAI-1フィブリノーゲン高感度CRPNLRP3インフラソーマCanakinumabAnakinraTocilizumab低用量メトトレキセート図2NLRP3インフラソーマでのIL-β活性化と炎症機構