カレントテラピー 36-11 サンプル

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16 Current Therapy 2018 Vol.36 No.111056アテローム性動脈硬化は,脂肪線条の形成からプラークの破裂に至る,多様な細胞の相互作用によるものと考えられている3).本稿では,動脈硬化と炎症のかかわりを中心に述べる.Ⅱ アテローム性動脈硬化の病態動脈は内膜・中膜・外膜の3層から構成される.喫煙,高血圧,糖尿病,脂質異常症などの危険因子の影響により,内皮細胞が傷害され,内皮の表面で炎症細胞の接着や遊走が促進される.最も早い病変である脂肪線条は,若い年齢でもみられ,個体により発現が異なる(図1)4).脂肪線条の病変は,脂質で満たされた単球由来マクロファージ,マクロファージ由来泡沫細胞,Tリンパ球などの細胞から構成される.内皮の接着分子の増加により,炎症細胞(単球とTリンパ球)が内皮に接着し,次に内皮に沿ってrollingする.これらの炎症細胞は活性化され,内皮間隙を通過して内皮下へ急速に移動する(図2).monocyte chemoattractant protein-1(MCP -1)は受容体のC -C chemokine receptortype 2(CCR2)を介して単球を内皮下へ遊走させる.MCP -1やCCR2のノックアウトマウスでは,動脈硬化が減少するため,これらは動脈硬化形成に必要であると考えられている5).単球はマクロファージコロニー刺激因子(macrophagecolony-stimulating factor:M-CSF)とその受容体であるcolony-stimulating factor-1 receptor(c -fms)のシグナルにより,マクロファージに分化する.マクロファージはlow density lipoprotein(LDL)受容体を持たず,scavenger receptor A1(SR-A1),CD36,lectin-like oxidized LDL receptor1(LOX -1)などのスカベンジャー受容体を介して酸化LDLを貪食し,コレステロールを蓄積して泡沫化する.内皮細胞の接着因子はセレクチン,インテグリン,免疫グロブリンスーパーファミリーの3つから構成される6).セレクチンは,P-セレクチン,E -セレクチン,L -セレクチン,インテグリンは,leukocyte function-associated antigen-1(LFA-1),Macrophage Antigen -1(Mac -1),complementreceptor type 3(CR3),very late antigen 4(VLA-4)を含み,また,免疫グロブリンスーパーファミリーは,intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1),ICAM - 2,vascular cell adhesion molecule - 1(VCAM -1),platelet endothelial cell adhesionmolecule - 1(PECAM - 1)などを含んでいる.M-CSF欠損マウスやP-セレクチン欠損マウスでは,動脈硬化が減少することから,接着分子の重要性が明らかとなっている7).0-10歳30歳未満30歳以上血栓出血狭窄増殖脂肪線条線維性被膜図1脂肪線条から動脈硬化への変化〔参考文献4)より引用改変〕