カレントテラピー 36-11 サンプル

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18 Current Therapy 2018 Vol.36 No.111058leukin 1(IL-1),M-CSFなどの炎症サイトカインは,LDLの内皮細胞と平滑筋細胞への結合を増加させ,LDL受容体遺伝子の転写を増加させる11).さらに,動脈硬化のすべての段階で,血管壁において大量のROSの放出が起こっている.ROSはNOを変性させることで内皮細胞の機能異常を惹起し,炎症細胞と活性化血小板の遊走を促進,平滑筋細胞の増殖を誘導し,動脈硬化促進的な脂質を酸化させる12).活性化された白血球もROSを放出し,LDLを酸化させる.酸化LDLは内皮細胞,平滑筋細胞,単球やマクロファージに存在するスカベンジャー受容体により吸収され,続いてプロテアーゼや炎症性サイトカインの発現増加,アポトーシスの誘導が起こる.このようにして,変性したリポ蛋白は炎症の悪循環を惹起する.活性化された単球やマクロファージは酸化LDLを吸収し泡沫細胞へ形質転換し,これらが内皮下に蓄積することで,脂肪線条が形成される.粥腫(アテローマ)は脂肪線条が進行したものと考えられ,脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,結合組織マトリックスから構成される.アテローム性動脈硬化では,線維性被膜の厚い安定プラークと,線維性被膜の薄い不安定プラークがみられる.不安定プラークの破裂が冠動脈で生じれば急性冠症候群の原因となる.安定プラークの線維性被膜は膠原線維と平滑筋細胞が多く,不安定プラークは脂質成分と炎症細胞(マクロファージ,リンパ球,好中球など)が多いとされている.炎症細胞はmatrix metalloprotease(MMP)を放出し,これは線維性被膜を菲薄化させる原因となる.動脈硬化において,血管平滑筋細胞(vascularsmooth muscle cell:VSMC)の異常な増殖によりプラーク形成が促進される.発達したプラークではVSMCが線維性被膜の破裂を防ぐことに役立つという考えもある一方,血管形成術後の再狭窄の原因ともなる.VSMCの形質転換により,平滑筋細胞マーカーが低下したマクロファージ様細胞など脱分化型へ変化し,これにより動脈硬化が促進される.VSMCのアポトーシス,細胞老化,VSMC由来のマクロファージ様細胞により,炎症が促進される可能性がある13).Ⅳ 免疫の役割アテローム性動脈硬化病変における免疫の関与は,迅速で非特異的な自然免疫と,緩徐であるがより的確な獲得免疫の2つの経路がある.病原体と自己抗原はこれら2つの経路を活性化させ,血管の炎症を引き起こす.循環している免疫細胞の活性化や分化が,動脈硬化の進展程度に影響する.脂肪線条に存在する細胞の多くはマクロファージ由来の泡沫化した細胞であるが,初期の病変ではT細胞も存在する.B細胞はプラークにほとんど出現せず,外膜に存在している.T細胞はプラークのすべての細胞の10%程度を占め,プラークのT細胞の70%はCD4+で,残りの多くはCD8+である14).血管壁におけるCD4+細胞の多くはTh1細胞で,IFN -γやTNF -αなど,動脈硬化促進的なサイトカインを放出する.他のプラークに存在するT細胞はTh2細胞,制御性T細胞(Treg),Th17細胞,ナチュラルキラーT細胞(natural killer T cell:NKT cell)などが報告されている.recombination -activatinggenes(RAGs)はT細胞やB細胞の成熟に関与するT細胞受容体(T-cell receptor:TCR)やB細胞受容体(B-cell receptor:BCR)の再配列に重要な遺伝子であるが,ノックアウトマウスでは動脈硬化が減少しており,このことから獲得免疫が炎症の促進と動脈硬化の進展に必要と考えられる.CD8+細胞の動脈硬化における役割は明らかでない.CD4+細胞については,Th1系統特異的な転写因子であるT -betの欠損や,IFN -γの阻害,Th1促進的なサイトカインであるIL -12やIL -18の低下により,動脈硬化が減少する.Th2とTh17については動脈硬化への影響について議論が分かれている.Tregは動脈硬化抑制的に,NKTは促進的に働くとされている.Ⅴ 最近の話題近年,腸内細菌と動脈硬化の関連が注目されてい