カレントテラピー 36-12 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.12 43各診療域の遠隔医療1191また,Nishizawaらは,東日本大震災の際に,クラウドコンピューターを用いた遠隔血圧モニタリングシステムである災害時循環器疾患予防支援システム(Disaster Cardiovascular Prevention Network:DCAP)を被災地に導入した.これは,登録されている患者の血圧データ(在宅被災者の場合は家庭血圧データ,避難所被災者の場合は,避難所に設置されている血圧計で測定したデータ)が自動で自治医科大学に送られるシステムで,そのデータを解析し,ハイリスク患者を抽出して現地にいる医師へ報告されることで,優先的にハイリスク患者の治療へ介入できるという仕組みである.このモニタリングと介入を継続した結果,被災地における家庭血圧の平均が2011年5月には151.3±20.0/86.9±10.2mmHgであったが,2015年6月には120.2±12.1/70.8±10.2mmHgまで改善した.また,夏期における最低血圧値と冬期における最高血圧値の差が,3年間の観察で8.7mmHg,8.1mmHg,6.9mmHgまで改善することも示された6).ICTを高血圧診療へ応用することで,家庭血圧の改善が十分期待されるモデルとなった.Ⅳ 遠隔医療の懸念事項遠隔医療では,従来の対面診療と異なり,デジタル機器を介在することによる弊害に注意すべきである.現在の日常診療において,臨床医は,五感をフルに使い,患者のキャラクターを把握し,個々人に合ったオーダーメイドでの治療戦略を立てているが,遠隔医療により,診療がデジタル化されることで,全人的な医療介入が困難になる場合や,患者の容態の変化にも気づきにくくなるかもしれない.また,遠隔医療を導入する際の設置費用や,使用困難な患者が生じることによる患者間格差が生じる可能性も検討すべきである.遠隔医療は非常に有用なツールと成り得る可能性を秘めているが,システムを鵜呑みにせず,医療の原点を十分理解したうえで,活用・普及していく必要があると考える.Ⅴ 今後の展望通信機器が発達してきている現代では,血圧-通信-遠隔医療を結びつけることのハードルは以前より低くなりつつある.自治医科大学では現在,最新の通信システムを利用し,有用な遠隔医療実現に向けたエビデンス創出を目指す臨床研究を実施している.まず,内閣府プロジェクトである革新的研究開発推進プログラムImPACT「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」は,最新のデータ収集システムを構築し,新規血圧計を用いて血圧情報,気温や湿度などの環境因子,身体活動度などの生活習慣因子を収集,個々のリスクを予見し,心血管イベント発症予防に繋がることを目的としている研究である.高血圧治療中の患者を対象に,同意が取得できた患者に,ライフレコーダー(新型ABPM,活動量計,体重計)を貸与する.さらに,自宅内の「居間」,「寝室」,「トイレ」,「脱衣所」,「玄関」の最低5箇所の生活空間に,温度・湿度・照度センサーとブリッジと呼ばれる通信機器を設置する.取得されたライフレコーダーの情報や環境情報は,ブリッジが自動的にImPACT研究用サーバーに送信する.メリットとしては,機器を医療機関に持参することなく,自宅でのデータ採取直後のデータがImPACT研究用サーバーに送信される仕組みになっているため,主治医との情報共有もほぼリアルタイムで可能である.また,どのような時にリスクのある血圧が検知されたのか(例えば,急激な温度変化があったのか,身体活動があったのか,睡眠中や起床時だったのか等)を把握することができるため,血管疾患発症に対するリスク回避へ繋がる判断材料となる(図1,2).このようにして本研究では,環境因子と個人の身体活動を同時モニターする時系列血圧モニタリングデバイスと,それを活用し,循環器疾患のイベントの発生と重症化を抑制する“予見”遠隔医療システム開発を行っている.次に,上記ImPACTと同じデバイスを用いて行っているHI -JAMP研究「家庭血圧測定機能および身