カレントテラピー 36-12 サンプル

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84 Current Therapy 2018 Vol.36 No.121232Ⅰ はじめに救急医療は突然の急性病態を扱う医療であり,外傷,急性脳血管障害,急性冠症候群,急性呼吸不全,重症感染症,ショック,急性腹症,消化管出血など多岐にわたる.また,救急車到着前・病院到着前の処置(プレホスピタルケア)や,速やかに専門施設での治療が必要な疾患が含まれている.そのため,一人の医師ですべて対応することは困難であり,専門医や専門施設との緊急相談ができるシステムを構築することは重要である.遠隔医療は離れたところから医療を提供する技術であるため,プレホスピタルケアとの連動や,専門医や専門施設との緊急相談に遠隔医療を活用することは有用である.近年,救急体制の拡充対策のひとつとして遠隔医療が注目されているが,遠隔地からの専門医によるテレビ電話や遠隔画像診断を用いた支援により診断率の向上や治療開始時間の短縮などの有効性が報告されている1)~4).遠隔医療で用いられる機器としてはテレビ会議システム,バイタル情報の伝送システム(血圧,心電図,呼吸回数,酸素飽和度,胎児心音など),遠隔画像診断システム,遠隔病理診断システムなどが挙げられる.上記の遠隔医療機器を用いることで遠隔地から患者の状況が把握できるようになる.その結果,他施設の専門医へのコンサルテーションや,3次救急施設と転院搬送の適応を相談することや,高画質なテレビ会議システムを用いれば,侵襲的な検査や手術をリアルタイムに遠隔サポートすることが可能となる.このように,救急医療における遠隔医療はさまざまな状況下で活用が期待できる.本稿では,専門医*1 利根中央病院外科部長*2 利根中央病院外科*3 利根中央病院副院長/外科部長・救急部長救急遠隔医療郡 隆之*1・鹿野颯太*2・浦部貴史*2・星野隼矢*2・関原正夫*3救急領域では扱う疾患が多岐にわたるため,一人の医師ですべて対応することは困難であり,救急担当医が専門医や専門施設との緊急相談が可能なシステムを構築するうえで遠隔医療は有用である.遠隔医療技術を用いた救急医療は複数領域で報告されている.病院前の遠隔医療では,在宅からの相談や救急車との連携,他の医療施設からの相談などが行われている.病院受診後施設内からの遠隔医療は,病院外にいる自施設の医師や他の医療施設への相談に用いられている.これらの領域では,救急患者の紹介や転院依頼時に遠隔画像診断を併用しながら相談できる体制を整えることで,早期の診断,画像の再撮影数の減少,不要な転院の減少などが可能になる.また,医師・専門医不在地との遠隔医療は,航空機内・船内,山岳地帯,南極基地,災害現場,戦場,海外などで行われている.いずれの領域で遠隔医療を行う際も,システム運用時のセキュリティ対策を整えることが重要である.遠隔医療の現況と展望