カレントテラピー 36-4 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.4 35341心房細動は心不全の他にも,心原性脳塞栓症のリスクである.心房細動患者における心原性脳塞栓症のリスクスコアであるCHADS2スコアやCHA2DS2 -VAScスコアにも心不全の既往の有無が要素として含まれているように,心不全合併心房細動は心原性脳塞栓症のハイリスクとされている3).高齢であれば年齢の要素も加わるためなおさらである.心原性脳塞栓症では重症脳梗塞(寝たきり,死亡)に至る率も50%と高い.高齢者の心房細動合併心不全では塞栓症の予防が重要であることを忘れてはいけない.Ⅱ 心房細動に対する治療戦略心房細動に対する治療戦略の3本柱を以下に示す.①レートコントロール②リズムコントロール③脳梗塞等の血栓塞栓症の予防これまで複数の試験でレートコントロールとリズムコントロールの予後が比較されている.そのなかでも代表的な大規模臨床試験がAFFIRM試験とAF-CHF試験である.AFFIRM試験は米国・カナダにおいて,年齢65歳以上など脳梗塞危険因子を少なくとも1つ以上有する患者4,060例を対象にリズムコントロール群とレートコントロール群に無作為に振り分け,5年フォローアップをし,生命予後を検討した大規模臨床研究である.その結果,両群間に生命予後の有意差なく,むしろレートコントロール群のほうが良い傾向であることが報告された4).死亡率は約2年後からリズムコントロール群で上昇傾向を認め,脳梗塞発症率もリズムコントロール群のほうが高い傾向と報告された.しかし,AFFIRM試験のサブ解析では,リズムコントロールができていた症例では,そうでなかった症例と比較して予後が良いことが報告された5).次いで施行されたのがAF - CHF試験である.AF -CHF試験は心不全既往のあるEF<35%の患者1,376例を対象にリズムコントロール群とレートコントロール群に無作為に振り分け,経過観察した大規模臨床研究である.AFFIRM試験のサブ解析を受け,リズムコントロール群は主にアミオダロン投与により高率に洞調律が維持できていた.その結果は予想に反し,心血管死亡に両群間で有意差が出なかった6).この原因としては洞調律化によるベネフィットが抗不整脈薬による陰性変力作用や催不整脈作用といったデメリットにより相殺されてしまったと考えられている.リズムコントロールには抗不整脈薬の他にカテーテルアブレーションでの治療があるが,カテーテルアブレーションに関してはまだレートコントロールと比較した結果は出ていない.ただ心機能低下例の有症候性の心房細動に対するカテーテルアブレーションで,74%の症例でEFが20%以上改善,またはEF55%以上となり,有意な心機能の改善が見られたとの報告がある7).また1,800人規模のメタアナリシスでも心不全合併心房細動に対するカテーテルアブレーションによってEFは13%上昇し,NT -心房細動心不全左室充満時間の短縮心房収縮の消失心拍出量低下左室充満圧上昇頻脈誘発性左室収縮能低下左室リモデリング進行左房筋の過伸展心房リモデリング進行左室圧負荷上昇心房での酸化ストレス上昇神経体液性因子の活性化心房内皮細胞傷害図1心房細動と心不全の関係