カレントテラピー 36-4 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.4 79治療薬解説385死と心不全再入院を示す.エナラプリル群より低血圧や軽度の血管浮腫はやや多かったものの,大きなリスクではなく,収縮不全の治療薬として欧米ではentrestoRという名前でACE阻害薬またはARBからの切り替えで発売されており,またガイドラインでクラス1に認定されている.PARADIGM -HF試験の対象は主としてNYHAクラス2-3の患者であり,重症心不全症例での使用や低血圧における対応などは今後の課題である.わが国では現在収縮不全に対して治験中であるが,早期の承認が望まれる.さらに今unmet needsの最たるものである拡張不全に対するARNIの効果がPARAGON-HF試験6)により海外で検証中である.Ⅲ Ivabradineβ遮断薬はRASとは異なる経路で収縮不全の予後改善効果を有する薬剤であるが,そもそも血管拡張作用から導入されてきたACE阻害薬/ARBや利尿作用から導入されてきたMRAとは異なり,β遮断薬は心不全の血行動態のどこをよくするのか不明な点が多い.しかし,収縮不全にはβ遮断薬が実は一番よく効くというのが2000年前後の大きな発想の転換期であった.陰性変力作用のあるβ遮断薬がなぜ収縮力の低下した心不全に効くのか,しかも徐々に増量していくとついには心収縮力が改善したり心内腔が小さくなったりすることが稀でない,いわゆるリバースリモデリングはなぜ生じるのか,今もって完全な説明はない.そのなかで陰性変時作用はβ遮断薬の有効性を説明する因子として以前から注目されてきた.心拍出量とは一回心拍出量と心拍数の乗数であり,一回心拍出量が低下する心不全においてその代償機転として交感神経の活性化などによる心拍数の増加が起き,全体として心拍出量を保持しようとする.ただし,これが長期にわたると心筋が疲弊するというのが悪循環理論であり,徐拍化することにベネフィットがあると考えられてきた.しかし単純に心拍数を下げれば良いかというと心拍出量が低下してしまうばかりで臓器障害を防ぐことができない.その兼ね合いが徐々にβ遮断薬を増量するというプロトコルになっているともいえるが,なかには十分徐拍化されない前に低血圧など忍容性にかかわる問題で増量できない症例もある.このような場合,心房細動ならば無効であるが,洞調律なら使用できる薬剤がivabradineである.Ivabradineは洞結節のIfチャネルの脱分極を抑制することにより洞結節の興奮回数を減少させ,心拍数が交感神経系とは独立して低下する.左室駆出率40%以下の洞調律患者でβ遮断薬を可能な限り増量しても心拍数が70以上であった症例に対してivabradineをプラセボと比較したのがSHIFT試験7)である.図2に示すようにivabradineは一次エンドポイントである心血管死と心不全再入院を18%減少させた.β遮断薬に真に忍容性がないのかの見極めは実0163240248Enalapril(n=4,212)Sacubitril-valsartan(n=4,187)HR=0.80(0.73-0.87)p=0.0000004Number needed to treat=210 180 360 540 720 900 1,080 1,260Kaplan-Meier Estimate ofCumulative Rates(%)Days After Randomization1,117914図1PARADIGM-HF試験(収縮不全)心血管死と心不全再入院2016年欧州・米国のガイドラインアップデートでクラスⅠ,レベルB.〔参考文献5)より引用改変〕