カレントテラピー 36-4 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.4 7313高齢者の心不全の早期発見・対策・治療― 健康寿命の延伸に向けて―企画群馬大学大学院医学系研究科循環器内科教授倉林正彦本号では,循環器診療のなかで最も大きな課題のひとつである,「高齢者の心不全の早期発見・対策・治療」を特集する.2016年に『高齢者心不全患者の治療に関するステートメント』が日本心不全学会からリリースされた.そのなかで,高齢者心不全は,コモンディジーズであり,進行性であり,致死的であること,そして,大半が心系疾患以外の併存症を有することが特徴であると明記された.急性心不全のATTENDレジストリーをみても,75歳以上が過半数,特に85歳以上が20%を占める.実際,ここ数年,病棟の回診をしていて,高齢者の心不全入院が急速に増加している実感があり,まさに高齢者心不全はパンデミックの様相を呈している.高齢者心不全の発症や予後には虚血性心疾患,心房細動,高血圧などの循環器疾患だけでなく,糖尿病,慢性腎臓病(CKD),慢性閉塞性肺疾患(COPD),睡眠時無呼吸症候群あるいは認知症やフレイルなど多彩な疾患が寄与する.それにも起因すると思うが,高齢者に多い左室駆出率の保持された心不全(HFpEF)の病態や治療法にはいまだ不明な点が多い.HFpEFの基礎疾患である高血圧や2型糖尿病,心房細動やCKDの予防や治療は進歩しているが,心不全は増加の一途である.この背景は言うまでもなく,高齢化が急速に進んでいることである.では,加齢がどのようなメカニズムでHFpEFの病態形成に関与するのか.高齢者の心不全の病態を明らかにすることは,臨床医学の基本的疑問を理解することに繋がるように思う.最近までに,LCZ696(バルサルタンとネプリライシン阻害薬との混合化合物)がエナラプリルに比べて,左室駆出率が低下している慢性心不全(HFrEF)患者の心血管死または心不全入院を,有意に抑制(PARADIGM -HF試験)するだけでなく,HFpEF患者においてNT -proBNPの低下と左房径の減少をもたらすことも示された(PARAMOUNT試験).また,SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンが2型糖尿病患者の心血管死や心不全入院を顕著に抑制すること(EMPA -REG OUTCOME試験)が報告された.LCZ696やSGLT2阻害薬がHFpEF患者で臨床アウトカムを改善するかについては現在進行中の臨床試験を待たなければならないが大きな期待を抱かせる.また,大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の有効性と安全性のエビデンスが国内のOCEAN-TAVIレジストリーで集積されてきている.本特集では,それぞれの領域の第一人者にご執筆をいただいた.高齢者心不全の理解と診療の一助になれば幸いである.エディトリアル