カレントテラピー 36-7 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.7 55661Ⅰ はじめに胃癌は日本人に多い癌として知られてきた.昨今,Helicobacter pylori (以下,H. pylori )の発見と衛生状態の改善,除菌の保険適応により,H. pylori 感染率は低下しており,今後,日本人の胃癌は減少していくことが想定される.しかし,高齢者の増加により,今後10年ほどはまだ胃癌の減少は望めないであろう.そのため,現状では,胃癌に対する診断法と治療法の概略を知ることは日常診療においても必要なことである.Ⅱ 病因胃癌の病因として最もよく知られているのが,H.pylori である.現在,日本人の胃癌の90%以上がH.pylori の現感染,または既感染である.H. pylori はCagAという病因となり得る因子を保有していて,これが胃粘膜細胞に直接,Type Ⅳ secretionという方法を介して,この因子を注入する1).また,H.pylori 感染により惹起される胃粘膜の炎症も胃癌発がんに寄与すると報告されているが,すべてが解明し尽くされたわけではない.また,同じ,H. pylori 感染が関係する胃癌でも,最近,米国から,胃癌組織の遺伝子変異,mRNA発現,プロモーター領域のメチル化などを調べ,ク* 東京大学大学院医学系研究科消化管外科学准教授上部消化管疾患の現況と今後の展望─病態・診断から治療を探る胃癌野村幸世*胃癌は日本人に多い癌である.その病因の大部分はHelicobacter pylori (以下,H. pylori )感染によるものである.それ以外にも遺伝性の家族性胃癌も存在する.症状はかなり進行しないと出ない場合が多く,胃癌を治癒可能な範囲で発見するためには検診が重要である.胃癌の診断は上部消化管内視鏡と生検による組織診断による.治療法決定のためには,胃癌の存在診断だけではなく,その転移,進展状況を知るために,CT検査は必須である.これにより,遠隔転移陽性か陰性かにより,治療法は異なってくる.リンパ節転移の可能性がきわめて低いステージの場合,内視鏡的切除術がなされる.それ以外の根治可能と思われる胃癌は手術を施行する.ステージによっては術後に補助化学療法が必要である.高度進行,または再発胃癌に対しては化学療法を施行する.化学療法剤は日進月歩であり,臨床試験も進行中であり,その時点で,ガイドラインに記載されている方法が推奨されるが,条件付き推奨もある.新薬の開発により,手術適応,手術法にも変化が認められる.