カレントテラピー 36-7 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.7 83代替療法689を対象に行われた単施設の小規模な研究であり,7日間の六君子湯投与後,胃排出とディスペプシア症状の改善が認められた9).原澤らは,運動不全型のFDに対する多施設共同RCTを行い,六君子湯の上腹部症状改善効果を示した10).この試験で注目すべき点として,前治療として他の運動改善薬で効果が得られなかった症例に対しても約50%の有効性が示されたこと,胃もたれ感とともに食欲不振の改善効果が高かったことであり,六君子湯が他の運動改善薬にない作用メカニズムを有することを示唆している.Araiらはドンペリドンを対照薬としたRCTを行った.主要評価項目であるディスペプシア症状の改善において両群に差を認めなかったものの,六君子湯投与群では血漿グレリン濃度の上昇を認め,さらにその上昇がディスペプシア症状の改善と有意に相関していた11).最近,247名のFD患者を対象としたプラセボ対照多施設ランダム化群間比較試験が行われた.六君子湯投与群では8週間後に心窩部痛が有意に改善し,食後のもたれ感も改善傾向を認めた12).さらにposthoc解析においてH. pylori 陰性者のなかで血漿グレリン濃度が低い群において六君子湯がより有効であることが示された13).また,別なプラセボ対照多施設ランダム化群間比較試験(DREAM study)において,六君子湯がディスペプシア症状および生活の質(QOL)の有意な改善をもたらすことが示されている14).Ⅲ 胃食道逆流症と六君子湯GERDの治療については,日本消化器病学会のGERD診療ガイドラインにおいて,GERD治療のフローチャートが示されている15).まず,基本として生活習慣の改善を行うが,薬物療法としては常用量のプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)の1日1回投与を第一選択薬とする.PPI治療によって症状が改善しない,いわゆるPPI抵抗性患者は,NERD患者の40~50%程度に認められ,この割合はびらん性GERD患者よりも高い.このようなPPIに対する治療効果の差に加えて,インピーダンス法などによる病態解析の面からも,非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease:NERD)はびらん性GERDの軽症型ではなく異なった病態をもつ疾患である可能性が示唆されている.PPI抵抗性GERDの場合,まず投与量の変更(倍量)や投与法の変更(1日2回投与など)を試みるが,その他,消化管運動賦活薬,制酸薬や粘膜保護剤を併用することも考慮される.最近,PPI治療抵抗性のGERD患者(特にNERD患者)に対する六君子湯の有効性を示す多施設共同無作為群間比較試験が報告された16).この研究では,常用量のPPIに六君子湯を併用した治療群とPPI倍量による治療群を比較し,症状消失効果が両者同等であることが示されている.また,PPI抵抗性NERDを対象としたプラセボ対照RCT(G-PRIDE study)も行われ,六君子湯の併用がPPI抵抗性NERD患者の精神的QOLを有意に改善させることが示された17).興味深いことに,食後の胃もたれ,悪心,食後の胸やけなどの酸関連運動不全症状が,女性あるいは高齢者において有意に改善していた.このようにPPI抵抗性GERDに対して,六君子湯の併用は期待できる治療法と考えられる.Ⅳ 胃切除術と六君子湯胃切除術後には摂食障害や体重減少などが生じることが多い.その原因として消化管ホルモンなどの機能的な障害が注目され,胃切除後のグレリン値低下がすでに報告されていた.そのため,Takiguchiらは胃切除後患者を対象として,活性型グレリンを増加させる作用を有する唯一の薬剤である六君子湯の臨床効果について検討を行った18).六君子湯投与4週後,活性型であるアシルグレリンと非活性型のデスアシルグレリンの比率が有意に上昇し,休薬により前値に復した.食欲,術後機能障害評価尺度(dysfunction after upper gastrointestinal surgery:DAUGS),QOLスコアは,六君子湯投与4週後にいずれも有意に改善した.グレリンは上部消化管外科領域における栄養療法の鍵を握るとされてい