カレントテラピー 36-7 サンプル

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84 Current Therapy 2018 Vol.36 No.7690ることから,六君子湯は上部消化管術後患者の栄養状態改善ならびにフレイルの予防に寄与することが期待される.また,最近の報告では,胃全摘後に血中GLP-1が有意に上昇し食欲不振に関与すること,六君子湯は術後の血中GLP-1の上昇を抑制することで,摂食を改善することが明らかとなっている19).Ⅴ 基礎研究からみた六君子湯の作用機序従来,六君子湯の作用機序として最も重要なものは,胃排出能や胃適応性弛緩の改善作用であろうと考えられてきた.2008年にわれわれは,六君子湯の構成生薬のひとつである陳皮に含まれるフラボノイドなどの複数の成分が,セロトニン5-HT2Bおよび5-HT2C受容体に拮抗することによりグレリン分泌を促進し,食欲を回復させることを報告した4).このグレリン分泌促進作用は,従来の消化管運動改善薬であるドンペリドン,メトクロプラミドには認められず,六君子湯特有と思われる.さらに,その後の研究によって,これらの成分が,セロトニン受容体に加えて,消化管および中枢神経系の複数の標的に作用することで,生体のグレリンシグナルを増強することが明らかとなっている(表)5).ヒトにおいても六君子湯により血漿アシルグレリンが増加することが報告されており,六君子湯の薬理作用が科学的に裏づけられたと考えられる.ごく最近,健常人において,六君子湯経口投与後OHHOOatractylodin(蒼朮) atractylodin carboxylic acid(蒼朮)pachymic acid(茯苓)OOOOOO OO OOOHOHOHO HOHOOHOHOHOHOH OHHHHheptamethoxyflavone(陳皮)nobiletin(陳皮) naringenin(陳皮)liquiritigenin(甘草) isoliquiritigenin(甘草) 18β-glycyrrhetinic acid(甘草)OOOOOOOOOOOOOOOOOO図2 ヒト血中への移行が証明されている主な成分〔参考文献20)を引用改変〕