カレントテラピー 36-7 サンプル

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98 Current Therapy 2018 Vol.36 No.7704シアの症状を改善し,特に,精神障害,胃に高度萎縮があると効果が出やすく,一度症状が改善すると一定期間は休薬しても効果が持続するという特徴があるようである.Ⅱ 胃運動異常とアコチアミドの効果健常者にアコチアミドを投与し,その30分後に投与された栄養液の胃排出能が二重盲検交叉試験で13C呼気検査により測定されたが,有意な差は認められず,生理的な条件下ではアコチアミドの効果はないようである4).機能性ディスペプシア患者にアコチアミドを14日間投与した前後の症状と胃・十二指腸運動機能を7段階のLikertスケール質問票と超音波法を用いて評価したところ,アコチアミド群は近位胃拡張率と胃排出率でプラセボ群より有意に改善した.一方で,前庭部運動指数,十二指腸胃逆流指数には差は見られなかった5).別の報告で,機能性ディスペプシア患者に対するアコチアミド2週間投与による,シンチグラフィー法による胃運動能,消化器症状,生活の質(QOL)・不安スコアが無作為化二重盲検プラセボ対照研究で検討され,アコチアミド群で有意に胃運動調節が改善し,胃排出率が増加した.また,消化器症状と,不安スコアが有意に改善した6).また,ラットでの実験ではあるがストレス誘発性の胃運動障害と摂食阻害がアコチアミドで改善した7),8).以上をまとめると,アコチアミドは健常者の胃運動には変化をもたらさないが,機能性ディスペプシア患者の胃運動異常と不安スコアを改善するようである.以上の臨床症状,胃運動改善効果の特徴がアコチアミドの薬理学的特徴のどこからくるか確認してみよう.Ⅲ アコチアミドの体内動態と薬理学的特徴実験動物に放射標識した[14C]アコチアミドを投与して,体内動態を評価したところ,十二指腸投与後速やかに消化管より吸収され,胃組織に高濃度に分布し,ほとんど中枢には移行しなかった.ラットとイヌにおける胃での局在が検討され,筋層間神経叢にアセチルコリンエステラーゼが局在しており,胃組織に50%阻害濃度(IC50)を超える濃度のアコチアミドが確認された(図4)9).吸収されたアコチアミドは一部グルクロン酸抱合を受ける.主にUGT1A(特に,1A9と1A8)に触媒される反応を介して,一次代謝物として,N -デスプロピルアコチアミド,6つの二次グルクロン酸抱合体代謝物に変化する10).代謝産物のアセチルコリンエステラーゼ阻害作用はきわめて低いとされる.排泄経路は主に胆汁であるが,約30~40%は未変化体,および代謝物として尿中に排泄される(前出のインタビューフォーム資料).アコチアミドは筋層間神経叢の神経筋接合部においてアセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼ活性を阻害することと,アセチルコリン受容体6050403020100W1AcotiamidePlacebo************ *** *** ***W2 W3 W4 FW1(week)FW2 FW3 FW4(%)図2 アコチアミド中断後のディスペプシア症状改善持続効果アコチアミド4週投与後(W4),中断されてもなお4週間の症状改善効果が維持されている(FW4).***:p<0.005対プラセボ〔参考文献1)より引用〕ディスペプシア症状の無再発率時間(日)継続群中断群p<0.0011.00.80.60.40.20.00 200 400 600 800 1,000 1,200図3 ディスペプシア症状の無再発率:継続群 対 中断群〔参考文献3)より引用改変〕