カレントテラピー 36-7 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.7 99治療薬解説705であるムスカリン受容体M1,M2を拮抗することで神経筋接合部のアセチルコリン濃度を上昇させ,胃の運動機能を促進する(図5).アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用についてはヒト赤血球アセチルコリンエステラーゼ活性を可逆的に阻害し,IC50はネオスチグミンおよびフィゾスチグミンの約1/100倍である11).次に,ムスカリン受容体M1,M2拮抗作用については,まず,アセチルコリン受容体にはムスカリン受容体(M1~5)とニコチン受容体があり,ムスカリン受容体は胃にはM1~3が存在している.膜結合アッセイ分析と電気生理学的解析により,アコチアミドは選択的にM1,M2に結合し,胃の運動を促進するM3受容体には結合しない12).神経終末から放出されたアセチルコリンが神経終末のM1,M2を活性化するとネガティブフィードバックがかかり,アセチルコリン放出が減少するが,アコチアミドはこの機構を阻害する.アコチアミドは,他のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であるイトプリドおよびネオスチグミンと同様に胃収縮を増強するが,それはアトロピン(ムスカリン受容体拮抗薬)およびヘキサメトニウム(ニコチン受容体拮抗薬)によって減弱する.一方,5-HT4受容体アゴニストであるクエン酸モサプリドは,この効果を引き起こさない13).これらの結果からアコチアミドはセロトニン-5-HT経路に影響を及ぼさないといえるのかもしれない.このように,アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用とM1,M2ムスカリン神経筋接合部神経終末アセチルコリンムスカリン受容体(M1,M2)ムスカリン受容体(M3)アコチアミドアコチアミドアセチルコリンエステラーゼ平滑筋の収縮図5 アコチアミドによる胃収縮改善機構生理的な条件下では,神経が活性化すると,アセチルコリンが放出され,平滑筋のムスカリン受容体M3を介して,平滑筋が収縮する.放出されたアセチルコリンは,アセチルコリンエステラーゼにより分解され,神経終末のムスカリン受容体M1,M2を活性化することでネガティブフィードバックにより,アセチルコリン放出が陰性に制御を受ける.機能性ディスペプシア患者ではこの機構が障害されていると考えられ,アコチアミドは,ムスカリン受容体M1,M2に拮抗することでネガティブフィードバックを遮断し,アセチルコリンエステラーゼを阻害することで神経筋接合部のアセチルコリン濃度を上昇させ,平滑筋の収縮を促進させる.アコチアミドは,ムスカリン受容体M3を拮抗しないため,平滑筋の収縮を阻害しない.Gastric fundusGastric bodyGastric antrumMucosaMuscular layer図4アコチアミドの胃局在放射線標識した[14C]アコチアミドを犬の十二指腸に投与後30分には胃組織にアセチルコリンエステラーゼの50%阻害濃度を越えるアコチアミドが局在していた.〔参考文献9)より引用〕