カレントテラピー 36-7 サンプル

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100 Current Therapy 2018 Vol.36 No.7706受容体の選択的拮抗作用により,副作用が少なく高い胃運動改善効果を発揮しているものと考えられる.Ⅳ アコチアミドの胃以外への影響前出の機能性ディスペプシア患者の不安スコアをアコチアミドが有意に改善した報告から6),アコチアミドの中枢への影響も否定しきれない.実際,前述のラットにおけるストレス誘発性胃運動障害と摂食阻害のアコチアミドによる改善効果の検討7)において,アコチアミドは延髄,視床下部におけるGABA受容体,GABAトランスポーター,およびニューロメジンUなどのストレス関連遺伝子の発現に変化をもたらした.アコチアミドはほとんど中枢には移行しないが視床下部-下垂体-副腎系においてストレス制御における潜在的役割が示唆されている.機能性ディスペプシアの病態に十二指腸の酸知覚が関与しているが,アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用を有する薬物は,ラットにおいて十二指腸での重炭酸分泌促進作用を示し,アコチアミドにも十二指腸重炭酸分泌作用が用量依存的に認められることが報告されている(図6)14).次は,食道運動異常についてであるが,健常者では,アコチアミドは食道運動機能に影響を与えないとする報告と15),一過性下部食道括約筋弛緩が減少し,食道クリアランスが高まるとする報告がある16).下部食道括約筋弛緩障害には,食道アカラシアとその前段階とされる食道胃接合部通過障害(esophagogastricjunction outflow obstruction:EGJOO)があるが,アコチアミドにはこのEGJOOを治癒に至らす効果が報告されている17).EGJOO患者では,咽頭水刺激による下部食道括約筋弛緩(機能性ディスペプシアにおける適応性弛緩反応に相当)が障害されているが,アコチアミドはこの障害を83.3%改善させる.アコチアミドには,消化管全体の適応性弛緩反応を改善させる効果があるのかもしれない.全身性強皮症に伴う食道運動障害で重度の胃食道逆流症(gastro esophagealreflux disease:GERD)が生じるが,アコチアミド投与により半年後にはGERD症状が治癒に至った症例が報告されている18).アコチアミドとその代謝物の30~40%が腎排泄であることと関連があるかは不明であるが,排尿筋障害に対するアコチアミドの効果が報告されている.ベースラインでの残尿量(161.4±90.0mL)がアコチアミド投与後に有意に減少すること(116.3±63.1mL)が報告されている19).ヒトにおいて有意な有害事象は知られていないが,ラットでの24カ月間のがん原性試験において,子宮内膜腺癌が中間用量群(600mg/kg/日,投与量換算で臨床用量の約100倍)で有意に増加したとの報告がある.ホルモン不均衡は誘導しなかったことから,自然発生腫瘍の偶発事象と考えられている20).このようにアコチアミドの効果は,胃以外にも中枢,食道,十二指腸,尿路にもあるようである(下部消化管に与える影響は報告を見つけることができなかった).今後,アコチアミドの薬効と長期投与における毒性研究がさらに進むことが期待される.正味HCO3-分泌(μEq/h)3.02.01.00.030 100アコチアミド(mg/kg)3 10対照*********図6麻酔下ラットにおけるアコチアミドの十二指腸アルカリ分泌に対する効果投与後1時間の正味HCO3-分泌量は濃度依存的に増加している(平均値±標準誤差***:p<0.001 vs.対照群).〔参考文献14)より引用〕