カレントテラピー 36-7 サンプル

カレントテラピー 36-7 サンプル page 28/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 36-7 サンプル の電子ブックに掲載されている28ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 36-7 サンプル

Current Therapy 2018 Vol.36 No.7 105Key words711上部消化管の内視鏡治療国立病院機構東京医療センター内視鏡センター長 西澤俊宏胃内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopicsubmucosal dissection:ESD)は2006年に,食道ESDは2008年に保険収載された.いまでは多くの一般医療機関で導入され,表在性腫瘍の標準的治療として普及している.近年,内視鏡による上部消化管スクリーニング検査の普及や内視鏡画像の高解像度化を背景に,十二指腸腫瘍に遭遇する機会が増加し,十二指腸ESDも増加傾向にある.十二指腸では,内視鏡の操作性が不良で筋層も薄く,技術的難易度がきわめて高い.外科医の十分なバックアップが得られる体制を準備したうえで,ESDの十分な経験のある術者が行うべき手技である.十二指腸ESD後の潰瘍に対しては膵液・胆汁・胃液の曝露から遅発性穿孔のリスクも高く,可能な限り閉鎖術を行う必要がある.留置スネアや糸付きクリップを利用したクリップ閉鎖法の他にover-the scopeclip(OTSC)システム?(Ovesco Endoscopy)も報告されている.OTSCは内視鏡先端にキャップとして搭載する内視鏡クリップで,形状記憶型の4本歯が左右から噛み込む機構をもち,より強力で持続性の高い組織把持力を有する.食道の弛緩不全を呈する食道アカラシアに対しては,これまで薬物療法(カルシウム拮抗剤・硝酸薬),バルーン拡張術あるいは外科的治療(Heller手術)が行われてきた.昭和大学の井上晴洋教授により開発された経口内視鏡的筋層切開術(Per-Oral EndoscopicMyotomy:POEM)は,手術と同等以上の効果が期待できる低侵襲治療で,2016年に保険収載された.POEMではまず,粘膜下層に局注剤を注入し,内視鏡用ナイフで粘膜切開をして粘膜下層に入り込み,粘膜の下にトンネルを作成し,筋層(下部食道括約筋)を切開する.最後に粘膜切開したトンネルの入り口をクリップで縫縮して終了となる.内服治療で改善しない難治性逆流性食道炎に対しては,Nissen手術に代表される外科手術が行われてきた.最近,新しい治療として内視鏡的に噴門形成を行う内視鏡的噴門粘膜切除術(anti-reflux mucosectomy:ARMS)が試みられている.噴門粘膜の亜全周切除による人工潰瘍が瘢痕収縮することにより噴門が引き締まり,良好な成績が報告されている.