カレントテラピー 36-8 サンプル

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36 Current Therapy 2018 Vol.36 No.8764Ⅰ はじめに結核病巣の進展は病理学的に白血球やマクロファージなど組織球の遊走と乾酪壊死の形成による滲出性病変,マクロファージが類上皮細胞やLanghans巨細胞へと分化して肉芽腫組織を形成する繁殖性病変,類上皮細胞の周囲を膠原線維が取り囲む増殖性病変,治癒機転が進むことによる病巣縮小や石灰化する硬化性病変から形成されている.肺結核の画像所見が多彩であるのは,病理像が多様性に富みさまざまな時相の病変が混在すること,結核菌の分裂速度が遅く進行が緩徐なために新旧の病変が混在すること,感染・発病の間にリンパ行性・血行性・管内性と菌の転移様式が多様であること,個々の免疫能や基礎疾患により発症形式や画像所見が異なることが挙げられる.結核は好気性の菌であり,一般的には主病巣は上葉の肺尖部や肺尖後区(S1,S1+2),下葉上区(S6)に好発するので,まずは上肺野の左右差に注目することが大切であるが,高齢者や免疫の著しく低下した患者では非典型画像を示すものも多い1).肺結核で認められる代表的な画像所見2)を提示し,所見に関しての概略を説明する(図1).Ⅱ 典型例1 空洞影(図2)結核の最も特徴的な所見であり,病巣に交通する気道(誘導気管支)を通じて病巣内の壊死性物質が排除されると,欠損部位として空洞が形成される.非結核性抗酸菌症も空洞影を形成する疾患であるが,結核病変に比して空洞壁が薄い3).結核症のみで空洞内部にニボーが形成されることはまれで,あれば一般細菌による混合感染を考慮すべきで,空洞が将来的にアスペルギルス症の発生母地となり得る.高齢者や免疫能の低下した患者では比較的空洞形成は起こりにくく4),特に進行したHIV感染者では空洞形成が少ない5)ことも特徴である.*1 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科*2 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科部長*3 神奈川県立循環器呼吸器病センター副院長・呼吸器内科部長日本の結核の最近の動向─ 2020年に日本は結核低蔓延化を実現できるか? 臨床医に求められる対応胸部X線から肺結核を疑う新谷亮多*1・萩原恵里*2・小倉高志*3肺結核が呈する基本的な画像所見は乾酪壊死を伴う肉芽腫性病変を反映しており,気道散布影と空洞形成が特徴的である.それら以外にも結核が呈する病変・画像所見のパターンはある程度決まっているが,個々の所見が重なり合って成立し呈する画像は非常に多彩である.胸部単純X線検査は簡便かつ迅速で最も手がかりとなる診断に有用な検査であるが,結核は病変の時相や患者背景により非典型的な画像を呈することも多く,いかなる画像所見であっても肺結核の可能性があるという認識が大切である.また胸部単純X線写真は質的診断には劣るため,その限界を認識し,胸部CT検査を追加したり,臨床症状の確認や細菌学的証明を欠かさないことも重要である.