カレントテラピー 36-8 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.8 71799Ⅰ はじめに結核はHIVに次いで世界で2番目に死因として多い感染症であり,2012年では新たに860万人が発病し,130万人が死亡している.地域差があり,新規発症は東南アジア,西太平洋,アフリカ地域の途上国に多く見られる疾患で,わが国の結核による死亡率は1950年まで人口10万人対146.4と全死亡率の首位であったが,有効な治療薬の開発や公衆衛生面での生活環境の改善等によって2015年現在1.6(29位)と死亡率は激減した.本邦における結核は制御される方向に向かってきてはいるものの,いまだ罹患率は13.9(人口10万人対,2016年)であり,中蔓延国という位置づけにある.2016年も1,892人が亡くなっており,これらの数値は欧米諸国に比べて高く,低蔓延化は達成されていない1).ストップ結核ジャパンアクションプラン2)のなかで2020年までの国内対策の重点施策の最初に,高齢者,ハイリスクグループ,デインジャーグループ(2次感染を生じさせやすい職業の者)に対する結核対策の強化,が挙げられているように,本邦の結核制御においては高齢者結核対策が重要である.実際に,新登録患者に占める高齢者の割合は年々大きくなっており,70歳以上の高齢者は1990年には29.2%であったものが2009年には50.1%,2016年には59%と増加している.新規登録患者数のピークは80歳代前半から80歳代後半に移りつつあり,結核治療の対象者は超高齢者になりつつある.高齢者では併存症の割合も高く,脳血管障害,認知症や精神疾患,糖尿病などの内分泌疾患や悪性新生物,消化器疾患も認められる.さらに,隔離に伴う抑うつや認知機能低下・せん妄発症などがより治療を困難にすることにも注意が必要である.*1 独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器内科医員*2 独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器内科医長日本の結核の最近の動向─ 2020年に日本は結核低蔓延化を実現できるか? 臨床医に求められる対応結核診療におけるNSTの重要性島田昌裕*1・鈴木純子*2わが国の結核罹患率,死亡率はともに低下傾向にあるが,いまだ中蔓延国の位置づけにあり,より制御されることが期待されている.現在の新規結核発症の中心は80歳以上の高齢者であり,特に高齢者結核への対策が望まれている.高齢者結核の問題点には脳血管障害,悪性腫瘍・糖尿病・認知症・低栄養など併存症の存在や,免疫抑制剤など既使用薬との相互作用による治療困難などが挙げられる.なかでも,低栄養は結核発症のみならず,結核入院期間の長期化,死亡率上昇,治療後の再発にも関連する重大な課題である.近年,nutrition support team(NST)という多職種医療チーム制度が導入され,栄養の観点から治療を支援することで入院期間の短縮や生活の質(QOL)改善,治療予後の改善が図られるようになってきている.本稿では当院のNST活動を通して結核の栄養療法について考えたい.