カレントテラピー 36-8 サンプル

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72 Current Therapy 2018 Vol.36 No.8800高齢者肺結核発症には栄養状態が深くかかわることや低栄養が予後不良の要因となることが知られている.さらに,栄養状態がよくない結核患者では治療方針に悪影響を及ぼし入院期間長期化,死亡率上昇につながるだけではなく,治療後の再発リスクにもなることが報告されている3)~7).日本人は食生活の欧米化が進み,平均的な食生活・栄養状態は改善しているように感じられているが,1990年と2005年の報告では結核患者における低栄養の頻度は20%と変わりなく,改善は認められていない.低栄養は積極的に治療介入することが望まれる課題である8).Ⅱ NSTについてNutrition support team(NST)とは医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,臨床検査技師,リハビリなど多職種で構成される医療チームのことで,患者の栄養状態の改善・治療効果の向上・合併症の予防・生活の質(QOL)の向上・在院日数の短縮・医療費の削減などを目的として,栄養状態を評価し,適切な栄養療法を提言する.NSTの有用性は広く知られ,診療報酬体系のなかでも加算対象となっている.しかし上記の如く結核と低栄養の関連は明らかであるにもかかわらず,結核病床は現時点ではNST加算対象外疾患となっている.そのためか結核病棟での診療が必要になることの多い活動性結核患者の栄養摂取状況や摂取方法に関する報告は少ない9).栄養アセスメントによる客観的評価の指標はさまざまで,2012年に行われた結核病棟を有する国立病院機構47施設対象の全国アンケート調査では,Alb,体重,BMI,リンパ球数などが利用されていた.なかでも,Alb<3.0g/dLの入院時評価で低栄養と判定された肺結核患者は,適正と判断されたものに比べて死亡退院率が高率であるとの報告や,入院時の食事摂取率低値は入院期間延長にかかわるという報告もあるためか,スクリーニングの指標としてAlb<3.0g/dLが簡便で有用とされ,多くの施設で判断基準に用いられており,当院でも基準として使用している3)~5),7),9).当院では結核病棟を対象にNST活動を行っており,その取り組みを紹介する.Ⅲ 当院のNST活動について当院は560床(うち結核病床100床)を有しており,東日本では最大の結核病床を有する病院である.2006年に発足した栄養サポートチーム(NST)は呼吸器内科医師,消化器外科医師,歯科医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,リハビリ〔理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST)〕,臨床検査技師,事務職員より構成され,表1に示すような院内活動を行っている.新入院患者を対象にAlb 3.0g/dL未満でスクリーニングが行われるほか,主治医よりの介入依頼に応じて対応する.介入依頼の内容としては,NSTによる栄養管理依頼,栄養ルートの検討,術前術後の栄養評価,経口摂取量の評価,輸液の選定,職種の選択および補助食の選択,経鼻・経腸栄養剤の選定,必要栄養量の計算,褥瘡対策(ケア・ポジショニング含む),摂食・嚥下評価など多岐にわたる.スクリーニング対象および介入依頼となっている対象患者リストは事前配布され,事前検討として各職種がそれぞれの立場で栄養評価を行う(表2).身長・体重などからHarris-Benedictの式を使用し基礎代謝量・必要エネルギー量を設定し,各部門担当者が食事内容とその摂取状況(看護師・管表1 当院のNST活動内容・NST回診 週1回活動前日までに )―対象患者の選定:①スクリーニング Alb<3.0g/dL②担当医からの介入依頼―事前検討:各職種がそれぞれの立場で行う当日 )―事前カンファレンス→回診→カンファレンス―→介入判定:計画立案・NST委員会 月1回―スクリーニング状況・活動実績報告,連絡事項等・定期勉強会―年7回(NST担当者が6回,外部講師による講演が1回)― 対象は病院全体(外部講師による講演会は他施設も参加可)