カレントテラピー 36-8 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.8 7735日本の結核の最近の動向― 2020年に日本は結核低蔓延化を実現できるか? 臨床医に求められる対応―企画東京都保健医療公社多摩南部地域病院副院長藤田 明15年ほど前になりますが『結核と歩んで五十年』(島尾忠男著,結核予防会発行)という題名の本が発刊されました.その「推薦のことば」の冒頭で,医事評論家の行天良雄氏は「私が若いころ,日本人は必ず結核にかかり,やがてこの国はそれで亡んでいくだろうと予想していた」と書いています.時は経ち結核患者は減り,2017年の日本の結核新登録者数は速報値で16,572人,人口10万対の罹患率は13.1となりました.しかし,世界的にみれば日本はまだ結核「中蔓延国」です.東京オリンピックが開催される2020年までに「中蔓延」を脱し,罹患率10未満の「低蔓延」を達成することが目標になっています.このことを皆様はご存じだったでしょうか.目標達成には行政や保健衛生の関係者だけではなく,臨床医の協力が不可欠ですが,罹患率の目標は必ずしも広く臨床医に知れ渡っている訳ではありません.多くの医師は,結核患者を年間に1人診るか診ないか,また病床数の多い病院でも一部の医療機関を除けば年間10人程度と聞いています.一方,近年,若年層においては外国生まれの結核患者が増加し,また,高齢者では結核の診断が遅れる例や治療困難例も少なくありません.目の前に来る患者は少ないとはいえ,1例1例への対応がしっかりしていないと,「罹患率10」の達成は難しくなります.そして,感染症対策の原則として,より早い段階で患者を発見,治療し,感染経路を絶つという考え方は,空気感染する結核菌に対しても同じですので,臨床医の役割は大変重要になります.また,結核は感染してから発病まで時間がかかることが多く,発病リスクが高い人には発病前の段階で治療することが重要です.これを「潜在性結核感染症の治療」と言いますが,全国で約7,500人(2016年)が受けていて,結核患者を減らすことに繋がっています.この数は決して少ないものではありませんし,処方されている例はもっと多いのではないかとも言われています.サブタイトルを「2020年に日本は結核低蔓延化を実現できるか? 臨床医に求められる対応」と付けました.是非,臨床医の先生に本号を読んでいただき,日常の診療において,また所属の医療機関において,結核の低蔓延化に向けて取り組んでもらえることを願います.さらに,臨床医のみならず感染対策の関係者にも,結核の現状について全体像を知っていただくため,読んでもらいたいと思います.院内の結核感染対策や健診に関する日頃の疑問に対しても,基本的な理解が得られるのではないかと思います.エディトリアル