カレントテラピー 36-8 サンプル

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8 Current Therapy 2018 Vol.36 No.8736Ⅰ 結核の中蔓延国に位置する日本官民一体となった結核への取り組み,戦後復興による生活水準の向上に伴い,わが国の結核罹患率は着実に低下してきたものの,現在も全国集計で,年間1万7千人(平成28年の集計では,17,625人)ほど,新たな結核の発病が登録されている.罹患率は人口10万人対13.9となり,毎年減少傾向にあるものの,年率4%程度の減少率に留まっており,抜本的な対策なく,これ以上の急速な減少を求めることはかなり困難な状況にある1).国際的には,人口10万人対10以下を低蔓延とし,欧米諸国は,移民の問題を抱えながらもこの水準を達成しており,わが国との隔たりをしばしば指摘される.厚生労働省の『結核に関する特定感染症予防指針』(平成28年11月改正)のなかでは,2020年,オリンピックの年までに低蔓延化を達成することが成果目標として掲げられており,一層の努力が必要とされている2).Ⅱ 高齢者と都市部に偏るわが国の結核発病新たに登録された結核患者を年齢別にみると,平成28年の集計では,60歳以上の患者割合は70%以上(71.6%),80歳以上に限っても全体の40% 近く(39.7%)を占めており,わが国の結核発病は世界的にみても高齢者に偏っていることが大きな特徴で* 公益財団法人結核予防会結核研究所副所長日本の結核の最近の動向─ 2020年に日本は結核低蔓延化を実現できるか? 臨床医に求められる対応日本の結核の現況慶長直人*わが国の結核罹患率は着実に低下してきたものの,現在も,毎年1万7千人ほどの新たな発病が認められる.60歳以上の患者割合が70%以上を占めており,発病は高齢者に,また社会経済的弱者が多い大都市部に偏っている.外国出生者の割合はまだ低いものの,20歳代の結核発病の60%近くを占め,薬剤耐性率が高い.国の結核医療の基準と施策,実地医家の適切な診断と治療と並行して,保健所が公衆衛生上の中心的な役割を果たしており,日本版DOTS(直接服薬確認療法)による服薬支援が実施されている.一方,結核への認識が薄れ,特に高齢者結核の診断の遅れが問題となっている.接触者検診等では感染診断にインターフェロン-γ遊離試験(interferongammarelease assay:IGRA)が定着し,伝播経路の解明に分子疫学的手法が活用されつつある.結核低蔓延化のためには早期診断,治療により感染の連鎖を断つとともに,発病の危険性の高い潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection:LTBI)を確実に治療することが望まれる.臨床,公衆衛生,行政の施策を有効に活かすため,国際的視点に立ち,新たな対策へとつながる革新的な研究の広がりが期待される.