カレントテラピー 36-9 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.9 57遺伝子プロファイル(単一のバイオマーカーでない例,未承認)889視的な検討でも一貫して同様の結果が得られ,米国のガイドラインでも記載されるようになったが,前向き試験でのより高いレベルで証明することが求められた.また,中間リスク群にホルモン剤単剤でよいのか,化学療法を上乗せすべきかが解決していないことも問題であった.そこで,米国国立がん研究機構がスポンサーとなり米国東海岸臨床試験グループ(ECOG)を主体にThe Trial Assigning IndividuaLizedOptions for Treatment(Rx)(TAILORx試験)が計画された(図4).Undertreatmentとならないように,本試験では10点以下を低リスク,11-25点を中間リスク,26点以上を高リスクとして,低リスク群には補助療法としてホルモン剤のみ,中リスク群のホルモン単独群と化学療法上乗せ群に無作為化し,高リスクには化学療法を上乗せして,1万人以上の患者を対象として前向きに実施された.2015年9月には低リスク群のみの成績が発表され,5年遠隔無再発生存率99.3%と非常に良好な予後が得られることを前向きに示し,Oncotype DXRで10点以下の場合はホルモン療法単独での補助療法の妥当性が示された13).2018年6月に中リスク群の結果も発表され,11~25点の中間リスクではホルモン剤単独群と化学療法の上乗せ群で予後は同等であることが証明され,術後補助療法としてホルモン剤のみでよいことも示された14).ただし,50歳以下の16~25点群では化学療法追加のメリットがあり,おそらく化学療法による化学閉経に伴う予後改善効果と考えられ,化学療法あるいはLHRHアゴニストによる卵巣機能抑制を追加することを検討すべきと考えられた.最終的には特に米国では1cm以上の浸潤癌はすべて化学療法が必要と考えられていた状況でHR陽性早期乳癌の約7割の患者が化学療法省略可能であることが示されたLN転移陽性のHR陽性乳癌におけるOncotype DXRの意義もSWOG 8814やTrans ATAC試験などのなかで検討された.閉経後LN転移陽性の患者に対しても再発スコアが低ければ化学療法の上乗せ効果は低いことが示唆されており,LN転移が1-3個のエストロゲン陽性早期乳癌患者においてもOncotype DXRの有用性が示唆されている(図5)15),16).2017年11月に発表された第8版American JointCommittee on Cancer(AJCC)の病期分類では,従来の腫瘍径(T),リンパ節転移(N)といった解剖学的な癌の進展だけでなく,ER,PgR,HER2,組織学的異型度,多遺伝子パネルといった生物学的要素も取り入れ,より実地臨床の実感に近い形となったが(図6),非常に細かな分類のため,運用はやや煩雑でもある17).多遺伝子パネルとしては特定のパネルを推奨するものではないとは記載しながらも,TAILORxの低リスクの結果を反映して,RS10点以下であれば,T1-2N0M0乳癌は異型度にかかわらずstage1Aにdown stageされると記載され,病期分類にも本検査が取り込まれた.Ⅳ 日本人におけるOncotype DXRのデータ2000年当時,国立がん研究センター中央病院で術前内分泌療法の臨床試験を実施していた筆者らは,米国外初の共同研究として,術前内分泌療法を投与した症例の針生検標本でOncotype DXRを計測した18).術前内分泌療法による臨床的効果とRSに相関する傾向が認められること(図7),日本人においてもこれまでのデータと同様,RSにより予後に差がでることを示すことができた.予後に関しては,症例数の多い本邦の多施設共同試験結果で,10年間の遠隔再発率は低リスク,中間リスク,高リスク群でそれぞれ3.3%,0%,24.8%と報告されており,RSは本邦のHR陽性,LN陰性乳癌患者にも予後とN0, ER+乳癌Oncotype DXR検査RS 11-25Randomizeホルモン単独vs.化療+ホルモンThe Trial Assigning IndividuaLized Options for Treatmen(t Rx)RS≦10ホルモン療法RS>25化療+ホルモン療法Enrolled 10,071 pts(2006-2010)N=6,897(67.3%)N=1,730(16.9%)N=1,626(15.9%)図4 TAILORx試験の概要