カレントテラピー 36-9 サンプル

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Current Therapy 2018 Vol.36 No.9 79Key words911BCR-ABL遺伝子のkinase domain変異に対する薬剤開発近畿大学医学部附属病院臨床研究センター講師 平瀨主税慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)の治療成績は,BCR -ABLチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinaseinhibitor:TKI)であるイマチニブの登場により,飛躍的に改善したが,一部の症例はイマチニブ抵抗性を示す.このような症例の約60%において,BCR -ABLのキナーゼ領域に60種類以上にも及ぶ点突然変異が検出されている.これらの点突然変異は,イマチニブのABLキナーゼ内のATP結合部位への結合を妨げることで,イマチニブ抵抗性の原因となる.この問題を解決するため,本邦では2009年1月に第二世代のTKIが登場した.ニロチニブは,イマチニブに比べATP結合ポケットにより適合した構造を有し,in vitroでイマチニブの約30倍のBCR -ABL阻害効果を示す.ニロチニブに特徴的な副作用として,心筋梗塞,脳梗塞,末梢動脈閉塞性疾患(peripheral arterial occlusive disease:PAOD)などの心血管閉塞事象,高血糖がある.ダサチニブは,ABLキナーゼの活性型および不活性型のいずれにも結合可能で,invitroでイマチニブの約300倍のBCR -ABL阻害効果を示す.BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC,LCK等),c -KITなどを阻害する.ダサチニブに特徴的な副作用として,胸水貯留,肺高血圧症がある.ボスチニブは,ダサチニブと同様にABL/SRCの両キナーゼを阻害する第二世代TKIで2014年9月に「前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病」に対して承認された.上記の第二世代TKIはいずれもT315I変異を除くBCR -ABL点突然変異の多くに抑制効果を示すが,その阻害プロファイルは異なっており,認められた点突然変異に応じて使い分けられる.第二世代TKIに抵抗性のT315I変異を克服するためポナチニブが開発された.ポナチニブは,側鎖に炭素間三重結合を有し,活性部位への結合阻害が生じにくい設計で,T315I変異体を含むほぼすべてのBCR -ABL点突然変異を抑制する.2012年12月に米国で,その後,欧州でも承認されたが,米国において重篤な血管閉塞性事象(心筋梗塞,脳梗塞,静脈血栓塞栓症等)が報告され,一時販売が中止された.その後,安全性確保のための対策を行うことで販売が再開され,本邦でも2016年9月に承認されたが,当該事象の発現に留意しなければならない.