カレントテラピー 36-9 サンプル

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8 Current Therapy 2018 Vol.36 No.9840Ⅰ はじめに肺癌における上皮成長因子受容体(epidermalgrowth factor receptor:EGFR)遺伝子変異の発見は,分子標的治療薬が肺癌で適応となり得ることを示し,その後の固形癌治療も大きく変えた.本稿では肺癌におけるEGFR 遺伝子変異とその検査法,治療薬について解説する.Ⅱ EGFR 遺伝子変異陽性肺癌についてEGFRは膜貫通型の受容体型チロシンキナーゼであり,human epidermal growth factor receptor(HER)ファミリーの一種である.リガンドであるEGFが受容体に結合すると,EGFRは二量体を形成し,下流シグナルのPI3K/AKT経路,RAS/MEK/ERK経路やSTAT経路が活性化,細胞分裂・増殖に重要な役割を果たす.EGFR 遺伝子変異によるキナーゼ活性化は下流経路の恒常的活性化をきたし,無秩序な細胞増殖や浸潤,転移をもたらす(図1).EGFR遺伝子変異は2004年に肺癌で初めて同定され,EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)の重要な効果予測因子となることが報告された1)~3).EGFR 遺伝子変異は女性,非喫煙者(もしくは軽度喫煙既往),肺腺癌に特徴的に多いとされる.またアジア人では腺癌の約50%,西洋人では腺癌の約20%と,その発現頻度に人種差があることも特徴のひとつである4).1 遺伝子変異の種類と頻度肺癌にみられるEGFR 遺伝子変異の大半はチロシンキナーゼドメインをコードするエクソン18-21に存在し,そのなかでもでもエクソン19欠失変異とエクソン21の点突然変異であるL858R が90%近くを占め,一般的に“common mutation”と呼ばれるのは* 市立岸和田市民病院腫瘍内科医長バイオマーカーを用いたがんの診断と治療EGFR阻害剤とEGFR 遺伝子変異,T790M 獲得耐性遺伝子変異谷﨑潤子*上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異陽性肺癌の発見は肺癌診療を大きく変えた.第一・二世代に加えてT790M 遺伝子変異を標的とする第三世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)も日常診療で使用できるようになったが,これらの薬剤使用にはEGFR 遺伝子変異の確認が必須である.本稿ではまずEGFR 遺伝子変異陽性肺癌の概要,EGFR 遺伝子変異検査について述べ,その後,各世代のEGFR-TKIについて代表的な臨床試験結果を概説する.現在本邦ではゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ,オシメルチニブが保険承認されているが,最も長期生存を得られる治療シークエンス・治療戦略については結論が得られていない状況であり,今後の動きが期待される.