カレントテラピー 37-1 サンプル

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Current Therapy 2019 Vol.37 No.1 3737る7).このガイダンスの序文には,「ガイダンスはガイドラインと異なる.ガイドラインはエビデンスレベルや推奨の強さを The Grading of RecommendationsAssessment, Development and Evaluation(GRADE)システムを用いて決定する.ガイダンスは各分野の専門家が記載し,臨床医が最新の知見を理解し実践しやすくするために,推奨(Recommendations)ではない,ステートメントを提唱する」としている.国内外において保険適用のあるNASHの治療薬がない現状で,既存薬剤によるNASHの改善効果が検討され,多くの新規薬剤の開発が進み,日々情報が更新されている状況を鑑みると,ガイドラインではなく速やかに改訂が可能なガイダンスとしたのも理解できる.本稿では,それぞれのガイドラインやガイダンスに記述されているNAFLD/NASHの病態,診断,治療の見解を読み解き,世界の診療ガイドラインの現状について概説する.Ⅱ 病態NAFLDの有病率は,地域や人種により差はあるが,本邦のガイドラインでは29.2%,米国のガイダンスでは25.2%と記載されており,慢性肝疾患のなかで最も頻度が高い.一方,NASHの有病率についての正確な報告はなく,本邦のガイドラインでは3~5%,米国のガイダンスでは1.5~6.45%と推定されている.いずれのガイドラインにおいても,NAFLDの発症要因として肥満とインスリン抵抗性が重要であり,主な背景疾患としてメタボリックシンドロームとその関連疾患の2型糖尿病,脂質異常症,高血圧がある.逆にNAFLD/NASHの存在はメタボリックシンドロームやその関連疾患の危険因子であり,心血管疾患の合併が高率であるとしている.本邦のガイドラインは,NAFLDは組織診断あるいは画像診断で脂肪肝を認め,アルコール性肝障害など他の肝疾患を除外した病態であると定義し,欧米のガイドラインは5%以上の肝細胞に脂肪化をきたした状態と定義している.いずれのガイドラインにおいても,NAFLDは肝細胞傷害(風船様変性)や線維化を認めない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholicfatty liver:NAFL)と脂肪変性,炎症細胞浸潤,肝細胞傷害(風船様変性)を特徴とする進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなるNASHに分類されている.また,NASHの予後規定因子は肝線維化の重症度であり,線維化が進展すると総死亡率,肝関連疾患死の割合が高くなるとしている.飲酒量は日欧ではエタノール換算で男性30g/日,女性20g/日未満,米国は男性21 drinks/週,女性14 drinks/週(1drink=14g)を基準値とし,APASLは,男性140g/週,女性70g/週を超えないことと定義している.いずれもアルコール性肝障害とのオーバーラップを避けるための基準値としているが,残念ながら十分な科学的根拠はない.国内外のガイドラインで推奨する飲酒量の基準値を表1にまとめた.Ⅲ 診断すべてのガイドラインに共通してNASH診断のgold standardは肝生検であるとし,他の慢性肝疾患との鑑別のほか,特に高度の肝線維化を疑う場合に肝生検を考慮するとしている.肝生検が適応となる症例を見極めるための手段として,①脂肪肝,②NASH,③肝線維化の非侵襲的なアセスメントや検査法が記述されている.学会文献男性女性JSGE・JSH 1),2) 30g/日20g/日EASL/EASD/EASO 5) 30g/日20g/日AASLD 7) 21 drinks(294g)/週14 drinks(196g)/週APASL 3) 140g/週70g/週表1世界の学会・組織による飲酒量の基準JSGE:日本消化器病学会,JSH:日本肝臓学会,EASL/EASD/EASO:欧州肝臓学会/欧州糖尿病学会/欧州肥満学会,AASLD:米国肝臓病学会,APASL:アジア太平洋肝臓学会