カレントテラピー 37-1 サンプル

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92 Current Therapy 2019 Vol.37 No.192ElafibranorはPPARαとPPARδのdual agonistである.NASH患者の予後改善には脂肪沈着だけでなく炎症・線維化の軽減が求められるため,PPARαの脂肪軽減・抗炎症作用に,抗線維化作用が期待されるPPARδ活性化薬をadd -onすることは理にかなっている.ElafibranorのNASH患者への有効性を調べるために,第Ⅱ相RCTが行われた(GOLDEN-505study)7).対象は非肝硬変のNASH患者274名で,Elafibranor 80mg/日,120mg/日またはプラセボを52週投与した.Primary outcome はNASHの改善(脂肪沈着,バルーニング,炎症の最低1項目のスコアが0になること),線維化の無増悪である.NASHが改善した患者の割合はプラセボに比しElafibranor120mg/日群で高率であった(19% vs. 12%,p=0.045).Elafibranorは軽度のクレアチニン上昇を認めたものの,血中脂質・糖代謝マーカーも改善させ,体重増加や心血管イベントを増加させなかった.GOLDEN-505の結果を踏まえて,第Ⅲ相RCTが進行中である(RESOLVE-IT study).RESOLVE-ITでは,有線維化NASH患者(線維化ステージ1~3)を対象とし,Elafibranor長期内服によるNASHの線維化改善と,それに付随した長期予後の改善を検証しようとしている.Ⅲ Obeticholic acid(OCA)OCAは核内受容体Farnesoid X receptor(FXR)の刺激薬である.その作用は従来よく使われてきたFXRリガンドであるケノデオキシコール酸の100倍といわれている.FXR はfarnesol pyrophosphateにより活性化される核内受容体として,1995年にFormanらにより報告された.FXRは肝臓や腸管など,胆汁酸代謝に関連する臓器に多く発現しているが,脂肪組織や副腎にもわずかに発現している.FXRが制御している代表的な遺伝子はbile salt export pump,organic solute transporter α,small heterodimerpartner,fibroblast growth factor 19(FGF19)であり,胆汁酸排泄に関係した多くのトランスポーターはFXRによって制御されている.またFXR刺激薬によるNAFLD/NASH改善効果,抗炎症・抗線維化作用も動物モデルで確認されている.慢性肝疾患では肝線維化の進行に伴いFXR活性が低下することからも,OCAが線維化や炎症を伴うNASH患者にも有用であることが推測されてきた.OCAのNASH患者への有効性を調べるために,第Ⅱ相RCTが行われた(FLINT study)8).対象は非肝硬変のNASH患者283名で,OCA 25mg/日またはプラセボが72週間投与された.Primary outcome はNAFLD activity score(NAS)2点以上の改善,線維化の無増悪である.NASが2点以上低下した患者の割合はOCAで有意に高く(45% vs. 21%,p=0.0002),線維化ステージが1以上下がった患者の割合もOCAで有意に高率であった(35% vs. 19%,p=0.004).一方,LDLコレステロールの上昇がOCA群で報告されており,長期投与による心血管系イベントのリスクが懸念された.また,OCAでは全身の痒みが24%に認められ(プラセボは3%),コンプライアンス低下につながる可能性が考えられた.FLINTの結果を踏まえて,現在第Ⅲ相RCTが進行している(REGENERATE study).REGENERATEでは,特に積極的な治療を必要とする有線維化NASH患者を対象として,OCA長期投与による安全性・忍容性,NASHの線維化とそれに関連した長期予後の改善を検証しようとしている.有線維化NASH患者をOCA 25mg/日,10mg/日,プラセボの3群に割付し,内服開始後18カ月の肝生検で組織像・線維化の改善を評価する.さらに内服開始後6年間フォローを行い,肝硬変や肝不全(肝移植)に至った頻度,全死亡率を評価する予定である.Ⅳ Cenicriviroc(CVC)炎症と線維化はきわめて密接な関係にあり,肝炎の鎮静化が線維化の改善をもたらす.肝外から炎症細胞を肝内に呼び寄せる機構として,ケモカインとケモカイン受容体が中心的な役割を果たしている.C-Cケモカイン受容体2,5(CCR2/CCR5)は単球,Kupffer細胞,肝星細胞の表面に発現しており,その