カレントテラピー 37-1 サンプル

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Current Therapy 2019 Vol.37 No.1 93治療薬解説93リガンド{CCL2(別名MCP1),CCL3-5}との結合により単球・マクロファージの肝への浸潤を促進させ,肝星細胞を活性化させる.腎線維化でも同様の機構が想定されており,CCR2/CCR5の阻害薬は線維症に対する治療薬として有望視されていた.CCR2/CCR5阻害薬であるCVCは,一日一回の経口内服剤である.CVCは力価が強く半減期が長い(ヒトでは30~40時間)ことが特徴で,肝線維化の進行したChild A -Bの患者にも安全に使用できることが報告されている.肝機能が低下しつつある高度肝線維化を有する患者にも安全に使用できる抗線維化薬はきわめて有用である.CVCのNASH患者への有効性が第Ⅱb相RCTで検討された(CENTAUR study)9).対象は線維化ステージ1~3,NAS 4以上のNASH患者289名で,CVC150mg/日またはプラセボを52週間内服した.NASとNASH寛解率は2群間で差がなかったものの,CVC投与群で線維化1ステージ以上の改善が認められた割合が高かった(20% vs. 10%,p=0.023).そして全身炎症マーカーであるIL -6,高感度CRP,フィブリノーゲンもCVCで有意に低下していた.Grade 2以上の副作用は倦怠感(2.8%),下痢(2.1%)であり,安全性も高いことが示された.現在,多施設第Ⅲ相試験(AURORA study)が進行中である.これは内服開始後12週での組織像・線維化の改善,さらに全死亡・肝関連死の割合,肝硬変への進展率など,長期予後改善効果を検証する.Ⅴ SelonsertibApoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)はNASHのように酸化ストレスが上昇した状況で活性化し,炎症やアポトーシスを促進させる.ASK1の活性化はc-Jun NH2-terminal kinase 1(JNK1)を活性化させるが,JNK1の活性化はPPARαを低下させて脂肪肝や炎症を惹起させる.また,JNK1の活性化はインスリン抵抗性や炎症性サイトカイン・ケモカインの発現亢進につながる.そして,炎症がさらにASK1-JNK1を刺激するという悪循環に陥る(図2).ASK1はNASHの進行を促進させることから,ASK1の活性阻害はNASHの治療法として有望である.Selonsertib(GS-4997)はASK1の選択的阻害薬で,ASK1がATPとの結合の際にATPと競合阻害することでASK1の活性を阻害する.SelonsertibのNASH患者への有効性が第Ⅱ相試験で検討された(CENTAURstudy)10).対象は線維化ステージ2~3,NAS5以上のNASH患者72名で,Selonsertib 18mg/日を24週間内服したところ,線維化ステージが1以上改善した割合が有意に高率であった.線維化の改善した患者では肝臓のコラーゲン量,ALT,cytokeratin 18が低下しており,組織像の改善と合致していた.頻度の高い副作用は頭痛,吐き気,倦怠感,上腹部痛であった.現在,線維化ステージ3(STELLAR -3study),肝硬変(STELLAR -4 study)のNASH患ASK1( 不活性型) ASK1( 活性型)JNK1 活性化酸化ストレス脂肪酸毒性炎症PPARα↓インスリン感受性↓炎症性サイトカイン↑ケモカイン↑NASHSelonsertib 図2NASHにおけるApoptosis signalregulatingkinase 1(ASK1)の役割ASK1は酸化ストレスや脂肪毒性,炎症で活性化し,c -Jun NH2-terminalkinase (JNK1)を活性化させる.JNK1の活性化はPPARαの低下,インスリン感受性の低下により脂肪肝を増悪させるとともに,炎症性サイトカイン・ケモカインの発現を亢進させる.NASHではASK1-JNK1が刺激され,さらにNASHが悪化するという悪循環に陥る.SelonsertibはASK1を選択的に阻害する.