カレントテラピー 37-1 サンプル

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Current Therapy 2019 Vol.37 No.1 1515Ⅰ はじめにメタボリックシンドローム人口の増加に伴い,欧米に限らずわが国でも非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)が最も頻度の高い肝臓病になっている.なかでも,進行性の肝病態である非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholicsteatohepatitis:NASH)は,肝硬変の成因として重要であるのみならず,肝硬変に至る手前でも肝癌の発症母地になり得ることから,ポスト肝炎ウイルス時代の最重要な肝疾患に位置付けられる.一方,NAFLD/NASHは肝臓病が死因となる以外にも,動脈硬化性疾患や他臓器癌による死亡リスクも高く,これらの他臓器病変の進行リスク因子としても注目されている.NAFLD/NASHの進展機序は従来,肝細胞への脂肪沈着を生じる第一段階と炎症・線維化が進展する第二段階に区分する,いわゆるtwo -hittheoryで説明されてきたが,実際にはこれらのステップは不可分であり,近年は多因子が同時並行で病態形成に関与するmultiple-parallel hit hypothesisがより広く受け入れられている1).本稿ではNAFLD/NASHの病態について,背景因子および進展メカニズムの観点から概説したい.Ⅱ NAFLD/NASHの遺伝的素因NAFLD/NASHの発症に遺伝的形質が深く関与していることはほぼ確実である(図1).近年のゲノムワイド関連解析(genome -wide associationstudy:GWAS)により,NAFLDに関連する一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)として,第22番染色体上のpatatin -like phospholi-* 順天堂大学大学院医学研究科消化器内科学教授NAFLD/NASHの病態池嶋健一*非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)はその主体がメタボリックシンドロームの肝病態であり,肥満や糖・脂質代謝異常など,全身性の代謝病態や動脈硬化性疾患と密接に関連している.NAFLD/NASHの疾患感受性は遺伝的形質によって規定されており,PNPLA3やTM6SF2などの遺伝多型の関与が明らかにされている.肝細胞への脂質貯留にはインスリン抵抗性や脂質合成・分解のさまざまなステップの異常がかかわっており,そのメカニズムは多岐にわたる.一方,脂肪肝炎の発症・進展には,脂肪毒性やストレス応答に伴う肝細胞傷害や,腸内細菌叢と腸管粘膜バリア機構の変化に起因する自然免疫系賦活が重要な役割を果たしている.これらの分子病態に基づく疾患概念の再構築と新たな治療戦略の確立が望まれる.NAFLDとNASHの現況と展望─ 国民病となったNAFLD/NASHの疾患概念の変遷と問題点