カレントテラピー 37-1 サンプル

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16 Current Therapy 2019 Vol.37 No.116pase domain containing 3(PNPLA3;adiponutrin)遺伝子にrs738409(I148M)およびrs6006460(S453I)の2つの変異が明らかにされた2).PNPLA3のI148M変異は肥満や糖代謝,脂質異常,高血圧などの代謝性素因との関連は薄い一方,肝脂肪化のみではなくNASHの線維化進行例に関連が強いことが明らかにされた.本邦で行われたGWASでもPNPLA3遺伝子rs738409の変異に有意な関連を認め,層別解析ではMatteoni分類でtype 4に強い相関がみられることから,日本人においてもNASH発症との関連が示唆されている3).Adiponutrinは脂肪組織での中性脂肪水解(hydrolysis)にかかわるadipose triglyceridelipase(ATGL/PNPLA2)と類縁の分子であり,PNPLA3のI148M変異は中性脂肪の水解を抑制することにより肝細胞の脂肪滴形成を惹起することが示されている4).また,adiponutrinは中性脂肪合成ステップに関与するlysophosphatidic acid(LPA)acyltransferase(LPAAT)として機能する5).PNPLA3以外にもNASH/NAFLDと関連が示唆されている遺伝子は多いが,動脈硬化性病態との関連で興味深いものにtransmembrane 6 superfamilymember 2(TM6SF2)が挙げられる6).TM6SF2の変異は肝細胞からのVLDLの分泌を規定していることから,E167K variantではNASHが進展しやすい一方で動脈硬化は起こり難いことが明らかにされた7).このことは,NAFLD/NASHが単なる動脈硬化性疾患のリスク因子ではなく,遺伝子型によって肝病態と動脈硬化の進展に差異が生じ得ることを示しており,NAFLDの病態に基づく病型分類の必要性が示唆される.Ⅲ NAFLD/NASHとインスリン抵抗性脂肪肝で肝細胞に蓄積する脂質の大半は中性脂肪(triglyceride:TG)であり,肝細胞への脂肪酸流入および肝細胞内での中性脂肪合成に伴う増加と,肝細胞内での酸化的分解およびVLDLとしての血中への放出に伴う減少のバランスによりその蓄積量が規定される.肝細胞への脂肪酸の供給源は食物と脂肪組織に大別され,前者は小腸粘膜で産生されたカイロミクロンがApo C -Ⅱを介して活性化したリポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase:LPL)で分解されることにより,後者は脂肪組織中の中性脂肪がホルモン感受性リパーゼ(hormone-sensitive lipase:HSL)で分解されることにより生じる.リポ蛋白リパーゼで分解されずに残ったTGは,カイロミクロンレムナントとしてApo Eとレムナント受容体を介して肝細胞に取り込まれる.インスリン抵抗性は2型糖尿病ないしその前段階である耐糖能異常の病態の根幹を形成する病態であり,高血糖に対するインスリンの血糖降下作用が減弱している状態である.インスリン抵抗性の状態では,内臓脂肪組織でのホルモン感受性リパーゼによる脂肪分解がインスリンで抑制されず増大するため,門脈血を介して大量の遊離脂肪酸(free fatty acid:FFA)が肝臓に流入する.肝細胞での脂肪酸のdenovo 合成は空腹時には抑制され,食事摂取で上昇するが,NAFLD患者では空腹時のde novo 合成が抑制されず,脂肪肝形成に重要な役割を果たしている.糖質,蛋白質,脂質はいずれもアセチル-CoAに変換されて脂肪酸合成の基質になるが,このアセチル-CoAからの脂肪酸合成にはacetyl -CoA carboxylase(ACC),fatty acid synthase(FAS)などの酵素反応が関与し(図2),その制御因子としてsterol regulatory element-binding protein(SREBP)-1c,liver X-activated receptor(LXR),carbohydrateresponse element binding protein(ChREBP)NAFLDNAFL NASHNASH-LC HCCGenetic backgroundEpigeneticfactors図1 NAFLD/NASHの進行と遺伝的素因