ブックタイトルカレントテラピー 37-2 サンプル

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概要

カレントテラピー 37-2 サンプル

Current Therapy 2019 Vol.37 No.2 9121Ⅱ 目的本研究の目的は,腋窩リンパ節転移陰性の原発性乳癌患者を対象として,SLN生検の安全性を評価することを目的とする.SLN生検は,腋窩リンパ節郭清に比べ,患側上肢の運動障害やリンパ浮腫などの合併症がきわめて少ない低侵襲な手術であり,転移検索においても効率的な方法である.したがって,安全性が確立し,標準治療として,さらに多くの施設に普及することで,より多くの患者にとって福音となることが期待された.当時,SLN生検の長期成績に関しては,腋窩リンパ節郭清を最初から行った患者と,SLN生検で転移陰性と診断され郭清を省略した患者の予後に関する長期成績が未発表であった.しかしながら,腋窩リンパ節転移検索方法としての有効性,安全性は証明されているとして,すでに欧米の各種ガイドラインでも,臨床的に腋窩リンパ節転移のない患者へのSLN生検は標準術式と位置づけられていた.日本におけるSLN生検は,手技自体が保険適用になっていないものであり,使用する色素やアイソトープ粒子なども,海外で用いられている薬剤とほぼ同等とみなされ,他の用途では用いられていたものの,乳房内への注射に伴う安全性は確立されていなかった.臨床研究として,先駆的にSLN生検を行った施設の報告では,手技に習熟することでSLNの同定率は高くなり,その後の成績も良く,腋窩リンパ節転移診断を診断する有効な手技とのことであった.しかし,保険適用ではないために,全国どの地域でも行える手技とはなっておらず,がん対策基本法の目的のひとつである,医療の均てん化という点からも,この状態を一日も早く脱却することが求められた.したがって,本研究では,わが国において,先進医療や臨床研究として広く使用されている色素,アイソトープ粒子を用いた場合の,安全性と同定率に関して,前向きに検討することとした6).Ⅲ 方法本試験は,日本で使用される色素,アイソトープ粒子によるSLN生検の安全性をPrimary endpointとし,さらに同定率が欧米の成績と差がないことを検証することをSecondary endpointとした.対象は,Tis -T3N0M0,stage0~ⅢAの乳癌患者とした.SLN生検に用いる色素は,インドシアニングリーン,インジゴカルミン,アイソトープ粒子としては,スズコロイド,フチン酸,アイソトープ核種は99mTcを用い,色素法,アイソトープ法および併用法によるSLN生検について腫瘍近傍の皮下または皮内に注射して安全性および同定率を評価した.参加施設は手術前日までにデータセンターに患者登録用紙を提出し,手術終了後7日以内に結果を報告,重篤な有害事象が発生した場合は72時間以内に緊急有害事象報告書を提出することとした.欧米で標準的に使用している色素〔リンファズリン(イソスルファンブルー)〕での,重度アレルギー反応(アナフィラキシー反応,薬疹,その他の治療を要する薬剤反応を含む)の頻度は0.5~1.1%と報告されている.日本で一般的に使用している色素,アイソトープでの重度な有害事象が欧米のそれと比較して変わりないことを証明するには,イベント率を1.0%未満と仮定し,アルファ・エラー5%,ベータ・エラー20%(検定力80%)とすると,検証に必要な症例数は1,596例と算出される.また,同定率90%以上を有効とし,必要症例数を算出した.欧米の文献では同定率93%と報告されており,比較対象群のイベント率93%,研究対象群のイベント率89%,アルファ・エラー5%,ベータ・エラー20%(検定力80%)とすると,検定に必要な症例数は292例と算出される.色素法単独,色素+RI併用法でそれぞれ設定症例数以上を試験登録の最低目標とした.したがって,設定症例数は,色素法単独で300例以上,色素+RI併用法で300例以上,最終的には合わせて1,600例の症例集積を予定し,症例集積期間は2年間とした.